カカシ、戦場にて2

「ナルト〜!!!!!」
しっかり抱きついてナルトの感触を確かめつつフニフニのほっぺにチュー。
「あ・・・かぁし〜おぱよぉ〜」
小さな手を目いっぱい伸ばしてカカシのちょっと疲れた頬をギュッとはさむ。
「なぅとね〜ジィジがここにいちぇっちぇいっちぇちゃにょ〜。かぁしにおねぎゃいしゃれちゃらなぅとたたかうにょよ〜?」
寝起きゆえにいつもより舌っ足らずなナルトの言葉にカカシが状況を理解する。
簡単に言ってしまえば、火影からナルトへ勅命が下ったということ。
里に被害が及びそうな場合はカカシの判断でナルトに敵を掃討させろということ。
しかし、初めからそれをしないのはカカシ同様、火影もナルトを戦闘に出したくないのである。できれば里の普通の子供のように守られて慈しまれて育ってほしい。できるならば何も知らずに育ってほしいと。
そして、なにより怖いのである。
ナルトとて獣神。その力は人間に扱える代物ではない。
不用意なことで暴走でもしてしまってはもう抑えられないとこは目に見えている。
そしてなにより、ナルトがけがをしたり生命に危機が及ぶようなことが最も怖いのである。
「だ〜いじょうぶっ!!ナルトは里にお帰り?ここはちょっと危ないから、吉野さんと一緒に居て?」
カカシはナルトを戦場に出すことを拒否することを伝えるためにもナルトに里に帰るように諭す
「かぁしは〜?」
まだまだねぼすけのナルトはうとうとしながら抱っこされているカカシの腕にしがみついて離れない。なんとなく、ナルトにもここがどこなのかわかりかけているようで、クンクンとはなを鳴らして周囲の臭いをかぐ
「俺はもうちょっと頑張って悪い奴をやっつけてくるから」
カカシがニコッと笑ってナルトを見れば、ナルトはぐずりだしてしまった。
「うぇぇ・・・キューン・・・かぁし〜なぅととかえりゅの〜!!」
駄々をこね出してしまったナルト。まだちょっとおねむだったらしくぐずぐずとしていて抱っこしているカカシのベストはデロデロになってしまっている。
そこへ
「カカシ!!大変だ!!救援に来るはずだった砂隠れが途中妨害にあってこっちにこれてないらしい!!」
おもいっきり大きな音と声で入ってきたアスマ。
それにびっくりしたのはカカシだけじゃない。
「ウゥゥゥゥゥ・・・・」
突然の唸り声・・・
「うわッ」
カカシが驚くほど邪悪で強大なチャクラが爆発する。
「なうとがわるいこめっしてくる」
凶悪なまでのチャクラが赤黒く大地を染めて、周囲の忍が一様に固まる。
『ゴウッ』
すさまじい風圧とともに狐に姿を変えたナルトは最前線のほうへ跳んでいく。
「ナルト!!」
一気に正気に戻ったカカシは、固まるアスマをぶったたいて起こし、自分たちも前線に向かった。
いざというとき、己の身をたてにしてでもナルトをまもるために・・・


「わぅいこはどこなにょ〜!!!」
空から降ってきた強大な9本の尾をもつ狐。
そのチャクラは凶悪にして膨大で、赤黒く天を地を染めている。
紅い視線の先に見据えるのは抜け忍たち。
しかし、言葉は舌っ足らず。
どんなに怖そうでも舌っ足らず。
「な!!なんだコイツ!!」
恐怖に顔をゆがませて叫ぶ抜け忍たちはあわてふためいて逃げようとする。
ナルトが鳴くと同時に抜け忍たちの退路には炎が立ちのぼり、足もとには木が生えて気がつけば両手両足が拘束されている状態になっている。
その状態で
「ギャーオ!!!」
なんて、ナルトが遠吠えをあげれば、強大なチャクラの恐怖に鍛錬に鍛錬を重ねた上級の忍にもかかわらず、次々に意識を失ったり叫び声をあげたり・・・
「ナルト!!」
そんな状況を茫然と見ていたカカシたちだったが、さすがにそろそろ止めようと名前を呼べば、ナルトは普通の子狐サイズに戻ってさっさとカカシの腕の中で寝てしまう。


「なんだったんだろう・・・」
ナルトに抜け忍の末路を見せるわけにもいかず、戦場のみんなの配慮でさっさと帰らせてもらったカカシ。
しかし、帰ってきた先で見たのは、半壊の火影の執務室。
「ど・・・どうしたんですか!?まさか!!ここまで敵が!?」
なんて、めずらしくあわてるカカシ。しかし、
「ナルトが暴れたんじゃ!!」
火影がなんとか残っている椅子に腰かけて事情を説明する。
「ナルトは普段自然に起きる以外ではお前のチューがないとぐずるんじゃ・・・しかもぐずり方が半端じゃなくて、自分が起こされる原因になったものにあたりちらすんじゃよ・・・そりゃもうすごい勢いで・・・大きな狐になって凶悪なチャクラを発しながらワシがもってきた目覚まし時計を壊しおって、その勢いでワシの部屋が・・・」
途中から涙目で無残にもボロボロになっている机を撫でながら火影が突然カカシを見据える・・・
「そこで、これ以上里の被害を増やさんために、ナルトには戦場に行ってもらったんじゃ。お主のことじゃ。きっとナルトを守り抜くのはわかっておったし、なによりそばにおいておけばナルトはあばれんじゃろ?・・・まったくお主はどういう育て方をしたんじゃ!!!!」
お小言を受けつつもにやにやのカカシ。
さきほど起こされて暴れたのは、カカシのチュー以外で起きてしまったから。
ここが荒れ放題なのも、カカシのチューがなかったから。
すっかりカカシ的には上手に育ったナルトに、カカシは上機嫌でちゅーをする。
「ん・・・かぁし〜おぱよぉ?」
チューですっきり目覚めたナルトに「おはよう」と返して、カカシは満足そうに笑う。
「ナルトのおかげで早く里に帰ってこれたよ?ありがと」
カカシの言葉にナルトはうれしそうにエヘヘ・・・とか、笑って、実はまだ続いているお小言・・・というか、火影の愚痴を無視してさっさと家にかえるのでした。


  FIN

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