カカシ、狐をお風呂にいれる

「さぁ、ここが僕らのおうちだよ」
ナルトを抱っこしていたカカシはナルトを玄関におろし、ちょっと待ってってね。とその場から離れる。ナルトは今まで森のほら穴を住処として生活していたためにここがなんなのか分からないといった様子でおとなしくいわれるがままに玄関にちょこんと座っている。ただし、目線はキョロキョロとせわしなく、尻尾は興味深々なナルトの気持ちを反映してバタバタと右に左に揺れている。


「ナルト・・・とりあえずきれいきれいしようね?」
戻ってきたカカシは素足になっており、口布も額当てもほどいている。そしてやけにまくりあげられた袖とズボンはなぜか濡れている・・・
「?」
なにがなんだかわからないままに、着物のようにきていた毛皮と帯の蔦をポイポイとはがされて、すっぽんぽんになったナルトはカカシに連れられ浴室へ





「ゴォォォォォォン!!!!!!!!!!!!!!!」
もはやかわいらしい「コン」という鳴き声ではなく、絶叫が風呂場から聞こえてくる
「こら!!あばれな〜いのッ!!」
変態でも腐ってっても上忍である。先ほどまでは暴れる子狐の尻尾に打たれようが、爪でひっかっかれようがなんのその。器用にナルトの体をあらっていたカカシであったが、先ほどまでは「キュンキュン」とか「コンコン」と嫌がりつつもかわいらしい鳴き声であった。しかし今回はすさまじい絶叫が響き、日頃より鍛えている聴力と、風呂場の反響が相まって思わず耳を抑えたカカシは、絶叫が止んでナルトを見ると
「ナルト!?」
右目を抑えて唸るナルト・・・
「・・・シャンプーが目に入っちゃったのね・・・」
原因を理解したカカシはなんだかちょっとホッとしつつも、唸り声をあげて転がるナルトを救出すべく、きれいな水でナルトの目を洗ってやる。
「ナルト〜シャンプーのときは目をつぶっててねぇ?」
「シャンプ・・・きあぃ・・・きえいきえいも・・・」



風呂でピカピカになったナルトはぶるぶると身震いをして水分をとばす
「コラコラ・・・今拭くから」
手早くジャージを身につけ、ドライヤーをナルトにもたせて、バスタオルにナルトを包んで居間へ移動した。
コンセントをいれてドライヤーのスイッチを入れれば、機械的な音に驚いたナルトがカカシの膝から脱出を図るが、如何せん尻尾を脚に挟まれているためうごけない
「こんこんこん・・・」
不安げに鳴くナルトにドライヤーを当てれば、最初こそ怖がってカチンコチンだった体がみるみる弛緩して、気持ち良さそうにドライヤーの風に当たっている。
「くゎぁぁぁぁぁ・・・」
「ナルト?眠いの?」
いっちょ前に大きな口であくびをしているが、如何せんすっぽんぽんのため、このまま寝かせるわけにはいかないカカシは、用意しておいた己のTシャツを着せようとする・・・が・・・
「ギャウン!!」
大きな耳がひっかかって首の部分が入らない。無理に入れようと耳を曲げれば、痛かったのかいやだったのか手を掴まれて噛まれてしまった。
「ん〜・・・今までナルトがきてたのはワイルドすぎるからなぁ・・・」
少々の逡巡ののち、カカシは影分身を出し
「子供用の浴衣買い占めてきて」
と、木の葉ゴールドカード(木の葉の里ならどの店でも使えるクレジットカード)を渡した。窓から颯爽と消えた影分身と、自分の膝の上でぬくぬくと丸まってるナルトを交互に見つつ、「俺は親バカになるのかも・・・」などと呆けていが、それもナルトのおなかが可愛くキュ〜っと鳴き出せば終わり。
「コンコンこ〜ん・・・」
おなかを押さえてなにやら言っているナルトに「どうしたの?」と顔を見ればしきりに何かを伝えてくる
「とり・・・たかぁいの・・・おいしい・・・」
どうやら先ほど空を飛んでいた忍鳥をとって食べようとしていたがとれなかったと・・・そして、鶏肉が好きなのだと・・・
「ナルト・・・あれは食べ物じゃないからとっちゃだめだよ」
「・・・こん?」
首をかしげているナルトにもういちど「ダメ」と言い含め、「ちょっとまってってね」と台所に向かい、冷蔵庫の中を物色してみるが、あいにくと鶏肉はなく、代わりに豚肉があったので、足元に出して、野菜も見てみる・・・
『ガサガサ・・・』
「?」
足元にナルトの気配・・・しかもなんか血の匂い?
・・・
「ナルト〜!!!!???」
見ればカカシの足元でパックに入った豚肉を生のまま食べようとするナルト・・・急いで豚肉をシンクにあげ、ナルトを居間に戻す。
なぜ連れてこられたかわからないナルトは「きゅ?」と啼いておとなしくソファに丸まる。一方のカカシは自分が油断していたことを後悔しつつ、急いで調理にとりかかる。
「スピピピピピピピピ・・・」
呑気ないびきが聞こえてくる中。ナルトがおとなしく寝てるうちに・・・と焦るカカシはプロの料理人も真っ青な手際で調理していく


さてさて、カカシが料理を作り終わるが早いか、空腹に耐えかねて起きるナルトがまたキッチンでつまみ食いを試みるのが先か・・・
ようやく二人の生活が始まったのである・・・


                         FIN

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