カカシ、お留守番する

「あぁぁぁぁっ!!!」
『ガシャン!!』
けたたましい叫び声と、大きな、何かがわれる音に目を覚ましたナルトが、ふかふかぬくぬくの毛布から抜け出してみれば、なんとも言えない強烈なにおいが部屋に立ち込める・・・
「く・・・くちゃいぃぃぃぃぃ!!!」
涙目で尻尾を垂らしつつ、カカシを探して四つ足で走るナルト。
「か・・・かぁしぃ!!!」
グズグズ鳴きつつもしっかり鼻をつまんだナルトは、カカシの足もとに転がる大きめのビンのバラバラになったものを見つける・・・
「ごめん・・・ルームフレグランスを変えようと思ったらおとしちゃった・・・」
面目なさそうに謝るカカシ・・・しかし、元来獣であるナルトにはそれどころではない。とにかくくさい・・・
「かぁし・・・なぅと。気持ちわるい・・・」
なんとも真っ青な顔をしてフラフラしているナルト。においに酔ったのは明らかで、カカシは急いでクリーニング業者に連絡を入れて、さっさと部屋を出る。
時間はまだ早朝・・・
明らかにどこの店もあいていない・・・行く場所は・・・


「はーーー・・・よかったねぇナルト?」
「うん!!かぁし〜。なぅとミゥクのみたい!!」
「ア〜ス〜マ〜・・・牛乳とコーヒー」
そう・・・おとなりさんのアスマ宅。
しかも、アスマは上半身裸な上に、ベッドには見慣れない女性ものの忍服・・・しかも、ベストから見ておそらく新米中忍・・・
「・・・アスマ・・・お前が浮気するとは・・・ね・・・」
カカシは案にアスマの彼女に行ってもいいのかと言う意志を込めてニヤリと笑えば、アスマは舌打ちをしつつ、だまってコーヒーを入れだした。
「かぁし〜・・・ここもちょっとくちゃいっ」
そういって、ナルトはベッドを見て鼻を抑える。カカシの使う高級フレグランスと違い、アスマの家に漂うのは、煙草の匂い。今回は女性ものの香水までまじっている。
(そういえば、ヤッてたにしてはにおいがしないなぁ・・・)
こっそり生々しい事を考えるカカシは、そっとベッドの中をのぞき見る。
・・・見慣れた顔だった。たしか、最近下忍から中忍に上がったばかりの受付の女の子。カカシにしてみれば、やたらとプレゼントとか、メアド書いた紙とか渡してくるちょっと面倒な女の子である。
「アスマ〜・・・この子はやめたほうが・・・」
おせっかいかとは思いつつ、カカシは柄にもなく助言をしてみれば・・・
「ちげぇよ!!!この女がお前の家の前で酔っ払ってぶっ倒れてたんだよ!!酔った勢いでお前の家に来たはいいがそのままぶっ倒れて寝ちまったらしい・・・それを俺が昨日の晩に任務から帰ってきた時に拾っちまったんだよ!!!!!」
カカシは、家に訪ねてこられなくてよかったと本気で感謝しつつ、アスマの不運を嘆いた・・・
「しかも・・・この女、俺が抱き上げて運ぶ途中で俺の胸元に吐きやがった・・・」
頭を押さえてげんなりするアスマは気づいていない・・・カカシがそっと指差していることを・・・
「アスマ〜!!!!あんた浮気したの!?」
玄関先にある女物の靴。
おそらく玄関から見えるであろう位置に転がる女物の服・・・アスマが数年間片思いして、やっと手に入れた最愛の恋人は、さすが上忍といった具合の速度で走り去っていった・・・
「ちげぇよ!!!」
そう叫んで最愛の恋人の元へ走るアスマは、上半身裸だし、裸足だし、正直格好悪いが、これも愛・・・
「さて、この女の子には悪いけど、ちょっとどっかに捨ててきて?」
さっと影分身を出したカカシは、アスマがご丁寧にも洗濯までしてきれいになっている服を着せて、さっさと外にほおり投げる。
「かぁし・・・あしゅまだいじょぶ?」
ナルトはカカシの腕に噛みつきながら、心配そうに眉根を寄せる。
「・・・帰ってくるまで、ここにいようか?ちゃ〜んと俺から説明してあげましょ!」
カカシは、憐れな友人のために、しばらくナルトと共に、ナニがあるわけでもかい空間で、友人の帰りを待った・・・


数時間後に帰ってきたアスマの顔には大きなもみじがさいていたが、彼女と仲良く帰宅してきた。
「くれにゃいちゃん!!」
「あら。ナルト?どうしたの?」
仲良くナルトと話をし出す彼女の名は「夕日紅」アスマの最愛の彼女にして、里の上忍・・・
カカシは、友人カップルに事の顛末を説明して、なんとも疲れた顔をしているアスマに、ちょっとだけ、憐みの目を向けた・・・

   FIN

頬にもみじができるほどの張り手をくらったアスマだが、めずらしくひっついてくる紅に上機嫌である。しかし、その腕に絡まる彼女の手には、ブランドのバッグが載った雑誌が握られていた・・・。

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