ナルト、敵前逃亡

「ナルト〜?そんなに怒んないで?」
カカシの猫なで声に「グゥゥゥ・・・」と低い声で唸る狐一匹・・・普段のお子様の姿では決して入れないような狭い隙間を縫い、カカシの手が届かない本棚の隙間に逃げん込んだナルト・・・カカシの手元から一切目を離さず、油断せずに唸り続ける。
「なんでそんなにいやなのよ・・・」
カカシの手には、ちょっと堅そうな金属でできたブラシ。
最近のナルトは季節の変わり目ということもあり、どんなにブラッシングしてもところどころに長い毛と短い毛が混合で生えていて、ボサボサな印象をうけてしまうのである。カカシがどんなに丹精込めて洗っても、ブラッシングしても、なぜかそうなってしまうのである。人型の時の尻尾も、耳も、ましてや今のように獣型になってしまうと余計なのである・・・
そんなわけでカカシは近所のペットショップでまとまった毛が取れるというちょっと堅そうなブラシを購入して、ナルトをきれいにすべく、ナルトの元に歩み寄ってみたら、こうなってしまったのである。
確かに、カカシから見てもなんだか堅そうなのである、やられる本人からしたらきっととんでもなくいやだろう・・・
無言の攻防戦を繰り広げた結果、どうあっても狭い隙間から出てこないナルトに嘆息して、口寄せを行う。
「なんじゃ」
出てきたのはパックン。もちろん、やることはひとつ。
「♪〜♪〜」
鼻歌交じりにブラッシングされておなかをだしているパックンと、それをナデナデしつつブラッシングするカカシ・・・それも、ナルトのいる隙間から見えるか見えないかの場所で・・・
「コンコン〜・・・」
ナルトだってブラッシングしてほしいのである。しかし、小さなナルトから見れば、あの銀色のブラシは恐怖以外の何物でもない。
しかし、パックンは気持ち良さそうにブラッシングされている・・・
(かぁしはなぅとのこときぇいきぇいするの〜)
半泣きになりつつ、コンコンと小さい声で訴えつつ、隙間から出ようとしたその時
『ブチ』
「これカカシ!!痛いぞ!!」
なんだか不吉な音と、パックンの怒声・・・
ナルトの中で、今の音がループする・・・
「ゴ―――――――――ン!!!!!!」
ほぼ悲鳴である。ナルトは泣きながら、パックンの横をすり抜け、なんとか部屋から脱出する。
「あっ!?ナルト!!」
しきりにパックンに謝っていたカカシが出遅れたその一瞬を付いて、ナルトは四足にチャクラを纏わせて一気に窓から飛び降りる。
シュタッ・・・タタタタ・・・
見事に着地を成功させ、ダッシュ!!向かうは火影邸。
「コォォォ〜ン!!」
鳴き声と共に現れたのは、影分身。うしろからカカシが追ってきているのを、ナルトはすでに感じ取っているらしく、カカシにむかって影分身がとんで行きます。
「かぁし〜だっこ〜」
「かぁし〜なぅとおにゃかへった・・・」
「かぁし〜あしょぼ?」
「かぁし〜・・・」
「かぁし〜・・・」
カカシの前にはナルトがいっぱいで行く手を阻まれます。
「はぁぁ・・・幸せ・・・」
カカシは鼻の下をのばしっぱなしでニヤニヤしつつ、ひとりひとりのナルトの要望を聞けば、嬉しそうにニコニコしながら影分身が消えていきます。
「ねぇナルト・・・オリジナルのナルトはどこにいくの?」
最後のナルトをナデナデしつつ、カカシが聞けば、ご満悦のナルトが素直に答える
「火影のジィジにたすけてもらうの〜」
こたえた瞬間にマズイと思ったらしい影分身のナルトは、『ポン』という音と共に消えて言った。
「火影邸・・・ね・・・」
タラリと冷や汗を流すカカシ・・・里長と、名家党首、ついでにその奥様と御子息を相手に戦える自身のないカカシは、瞬身で火影邸前にさっさと移動した。



もうちょっとで火影邸の入り口、というところで、ナルトの前に旋毛風が現れ、ナルトを包む。
「コンコン?」
ナルトは舌を出してハッハッと荒い息をしつつ、なにがおきたのかわからないとでもいうように首をひねる・・・と、嗅ぎなれたにおい・・・
「ナルト・・・俺の負けです。普通にブラッシングするから、帰っておいで?」
しかし、ナルトがバタバタと暴れる・・・
「デザートはプリン・・・」
バタバタ・・・
「今日の夕飯はお稲荷さん・・・」
バタ・・・
「お風呂はアワアワの青にしちゃおっかな」
「コンコン〜♪」
上機嫌に尻尾を振りだしたナルトに、カカシはニヤッと勝利の笑みを浮かべつつ、自宅に瞬身で移動する・・・


「さぁ、ナルト〜きれいきれいしようねぇ?」
なぜか今日はカカシに抱えられ、いつもと耐性が違うことに若干の違和感を覚えたナルトであるが、なんだか痒いところがすっきりして気持ちがいいので、そんなことはさっさと忘れて、気持ち良さそうに鼻歌をうたい出す・・・
ナルトの見えないように、カカシが例のブラシを使っているとも知らずに・・・
「きぇい〜き〜ぇい〜♪」



   FIN

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