カカシ、狐に怒られる

突然ですが・・・俺、はたけカカシは大変困っております。
帰宅早々に抱っこと迫ってきて、任務の疲れをふっとばすプリティーエンジェル狐さんことナルトを抱き上げたのはいい。
今日の任務は近隣の村での害獣退治。というか、ちょっと大きなハクビシンの巣が集落に点在していたので、お引っ越し願う任務であった。それはいい・・・ナルトのお願いのおかげで最近は任務がだいぶ楽だし、結構早めに帰ってこれるから・・・しかし!!その村と言うのが大豆を栽培する村で、尚且つ豆腐が有名・・・つまりは油揚げも有名・・・今朝任務に出かける際に「油揚げ買ってくるね!!」とか言ってしまったのをすっかり忘れて帰宅してしまった俺・・・やっちまったよ・・・完全に期待してるよ・・・尻尾の揺れっぷりがヤバいもん・・・誰だよ・・・今日俺が言ってた村が大豆の産地で豆腐と油揚げがおいしいって有名だって教えたやつ・・・あ・・・俺か・・・
ヤバい・・・今から影分身を出そう!!
ナルトの浴衣をゆっくり脱がせつつブラッシングして、お風呂にゆっくり入ってればなんとか間に合うかも知れない!!
でも、もう遅いぞ・・・豆腐屋あいてんのか?
もういっそ木の葉スーパーで買うか?でも油揚げとラーメンに関してはナルトをだませる自信がない・・・


そんなことを延々考えているカカシをよそに、ナルトにはある疑問が・・・
「かぁし・・・手ぶら(?)なの?」
カカシピンチ・・・ナルトのエンジェルアイが曇りだし、うるうるとしてきた。もちろん、超高速で印を組んで分身を出し、買いには行かせた・・・しかし、食べ物に関しては優秀なナルトの鼻は油揚げのにおいを感知していないことに、カカシは頭が回っていない。
「クンクン・・・」
ギクッ!?やっとこそまで頭が回るころにはもう遅い・・・
「コンコンコ〜ン・・・」
さめざめと泣きだすナルト・・・しゃくりあげる合間に「うそつき」とか、「なぅとのあぶらあげ」とか、カカシの心臓に悪い言葉がモリモリ挟まれている。
カカシはと言えば、胸のあたりをしきりに押さえて
「ナルト・・・もうちょっと待っててね・・・」

ただそれを繰り返して慰めるだけ。今日は赤い浴衣に黄色いクシュクシュ帯を付け、きれいな金髪がサラサラ動く可愛い天使は、カカシの影分身が返ってくるまでサメザメと泣き続けた。



「ごぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!!」
里に突然響く、狐の怒号・・・なぜなら、カカシ(分身)の手に握られていたのは、村の豆腐と油揚げ・・・しかし、大量の豆腐の下になっていしまっていた油揚げは無残にもひっつぶれ、しかもナルトの大好きな油揚げのお稲荷さんにしてほしかったのに、つぶれて破けてぼろぼろになってしまった油揚げは、もう煮付けか焼くしかないのである。普段の油揚げであれば、ナルトとて許したのであろうが、如何せん貴重な一枚。
ナルトの叫びもうなずけよう。
「コンコンコンコン!!コンコン!!コン〜!!コ〜ン!!!」
怒りに我を忘れて狐の言葉でしゃべるナルトに、カカシとカカシ(分身)はしょんぼりと「めんぼくない」と言ってちぎれた油揚げに丁寧にナルト好みの味を付け、破れていない部分にご飯を詰めてみるが、ナルトサイズにしても小さすぎる結果に、横で見ているナルトが鼻息荒く、「グルル・・・」とうなり声をあげた。
結局は油揚げの煮付けだけになってしまったが、食べ終わったナルトは大変上機嫌に「あぶりゃあげ〜」
と歌いながらおとなしく絵本を読みだし、カカシは帰ってよりずっと額にかいていた大粒の汗をひとまず拭った。




翌日、カカシが任務の報告にナルトの散歩がてら寄ったカカシは、一緒に任務に行った中忍が
「ナルト君は油揚げ好きなんだよね?」
と言って、大層おいしそうなあぶらあげ1袋10枚入り500両をナルトに手渡し、ナルトが大事そうに抱えて「ありがとう」言った。
カカシはなんだかやるせない気分に陥りつつも、「ありがとう」と言ってあぶらあげを床に引きずりつつもっているナルトごと、抱き上げて早々に姿を消した。



               FIN

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