カカシ、狐にチューさせる

「かぁし〜?」
いつもなら朝も早くからナルトのために朝食の準備やら、おでかけの準備やらを済ませ、お寝坊さんなナルトを起こすカカシは、今日はナルトが起きたことにも気付かないくらいに爆睡している。
「かぁし〜?なうとおっきちたにょ・・・」
となりで眠るカカシを揺り動かすも、起きる気配なし・・・
だんだんとさみしくなってくるナルトは、先日読んだ絵本の中に、キスで目覚めたお姫様がいたことを思い出す。
「かぁし〜・・・おっきなの・・・チュッ」
ナルトの可愛い唇が、掛け布団から出ている頬に可愛い音と共に落とされる。
「ん〜?ナルト?」
カカシは眠そうに目をこすりながら「今日はお休みだからもうちょっとねかせてね?」とナルトの頭を撫でつつ、頭を潜り込ませる。その途端にぷッくりと頬を膨らまし、ついでに9本の尻尾も膨らまし、耳はピンと立ち上がり、ウルウルした目でカカシの潜った掛け布団を見つめるナルトは、うっすらとあけた隙間から見ているカカシには可愛くて仕方のない姿なのである。しかし、カカシとて眠い。毎日毎日ナルトのお世話のみならず、任務があったり、任務がないと思ったら火影に呼び出されたりでカカシは疲れていた。
『ガバッ』
うっすらとあけた隙間から可愛いナルトを眺めつつうつらうつらしていたカカシは、突然まくりあげられた布団にびっくりして見上げれば、そこには大きな目に涙いっぱいためたナルト。
「・・・じゃあ、ナルトがおはようのチューしてくれたらおっきしようかな?」
あまりにもかわいいナルトの姿に眠気も吹っ飛んだカカシは、頬を差し出して、『チュ
ッ』とかわいいチューをしてくれたナルトを抱え、リビングに移る。
「かぁし〜・・・なぅと今日はミゥクといちごのジャムがいいの・・・」
最近のナルトのお気に入りの朝食はカリカリに焼いたパンにイチゴジャムをたっぷり塗ったものと、ホットミルクなのである。しかし、カカシは大の和食党。しかも「甘いもの食べ過ぎると虫歯になる」と言ってなかなかその朝食にありつけないナルトは、今日こそはとばかりに主張するも・・・
「今日は簡単にお茶漬けです」
バッサリと切られるナルト。それでもめげずにお願いしてみる。
「でもなぅと昨日カクとイイ子ちてたの!!」
唇を尖らせていうナルトにカカシは
「じゃあ、、、、お願いしますのチューしてくれたらいいよ」
と、またもやナルトに頬を差し出す。
『チュッ』
ナルトは向けられた頬に何のためらいもなくチューをして、めでたくトーストを勝ち取ったのである。



数日後
「ナルト〜。俺はちょっと任務があるから、良い子にしててね?」
「あい!!」
そんなわけでナルトは火影とシカクに預けられ、カカシは任務に出発する。

「ナルト。今日は字のお勉強をしような?」
教本のようなものを片手にナルトをいつものソファーに座らせるも、今日はなんだか気もそぞろ。なぜかと言われれば、ソファーテーブルの上には大好きなお稲荷さん。腐っても妖狐。腐っても狐なナルトはお稲荷さんが、もとい油揚げが大好きなのである。それが目の前にあれば、考える事はひとつ・・・
「カク〜・・・なぅとちゃべちゃいの・・・」
お稲荷さんの入っているタッパーを指差し、小首をかしげる様は大変に可愛いが、そんな我がままを許すおっさんではないし、じいちゃんではない。シカクがダメならと火影にも同じことをするが、失敗に終わり、「イイ子にしてたらお昼ご飯でたべような」と、シカクが抱っこすると
『チュ』
と、ナルトがシカクのほっぺにチューをする。途端に固まる火影とシカク。ナルトはキョトンとしつつ
「おねがいしまちゅのチューしたの。」
と、だから食べていいでしょとばかりにシカクを見上げる。
「ナルト・・・聞くまでもないが、チューは誰におそわった?」
若干の青筋と大量の不可解な汗に見舞われているシカクの問いに元気よく「かぁし!!」とか答えたナルトは、結局はお稲荷さんをゲットし、ただでさえ幼児体型でポンポンなおなかをさらにポンポコリンにさせて大満足でお昼寝に入った。
幸せそうにコンコン寝言を言いながら寝ているナルトを火影に任せたシカクは、任務から帰ってきたカカシをこっぴどくお説教し、今後一切ナルトにお願いのチューをさせないように約束させた。




帰り道。シカクにチャクラを纏わせた平手を受けたカカシは左頬を腫らしていた。
「かぁしいちゃいの?」
心配げに頬をさするナルトに
「ナルトがいたいのとんでけのチューしてくれたら治るかも・・・」
懲りないカカシ・・・「お願いのチューじゃないもん」とか思いつつ、真っ赤にはれた頬にナルトがチューをすると、カカシの頬の赤味はみるみる引き、完治した。
「!?ナルト!?なんかしたの?」
「かぁしがいちゃくないようにッて思ってチューしたの」
テレテレとしっぽを揺らしつつ言う。
「俺以外の人にチューしちゃダメだよ?」
と、ナルトに言い含めた。ナルトを改めて妖狐として認識したカカシはその妖力は良くも悪くも利用されやすい。
カカシはナルトを守るためにという大義名分の下、ひそかにシカクに対し「ナルトにチューされやがって!!されていいのは俺だけなの!!」とか思っていた事を実現させ、めでたく独占欲の塊カカシはナルトのチューを獲得した。


                  FIN

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