カカシ任務中2

食堂でのナルトの挑戦が始まった・・・
小さな右手にはお子様用フォーク。左手にはラーメンの入ったお椀。
ナルトは懸命にフォークを動かし、びちゃびちゃとこぼしながらもなんとかラーメンの麺をすくい、口に入れることに成功する。
「ラーメンおいちい!!」
上手に食べられたというようにシカクの顔を見上げれば、頭を撫で撫でされた。ナルトは嬉しくてもう一度、今度は先ほどよりも多めに麺をすくい、上手に食べる・・・とはいっても、麺は器から出ておらず、ちょっと持ち上げたところに顔を突っ込んで食べているので、傍目にはちいさなどんぶりに顔を突っ込んでいるようにしか見えないが、しっかりと椅子にお尻を付けて座り、道具を使って食べるなど、ナルトにとっては大進歩なのである。
「ジィジ!!」
ほめてとばかりにフォーク片手に火影を見れば、やっぱり撫でてくれた。
もうテンションあがりまくりのナルトは、椅子の背もたれにひっかけてあるリュックから巻物を取り出す・・・尻尾で。
9本ある尻尾のうちの1本が巻物をあける。緊急用と書いてあるにもかかわらずスルスルとあけていく尻尾にナルトの両隣でナルトが食べる行為に夢中になっていた火影とシカクは気づかない・・・

『ボフン!!』
大きな音と煙に後ろを振り返った火影とシカクは驚愕する。
背後にカカシが立っていたのである。「ナルト〜。緊急時以外はダメって言ったでしょ?」なんて、ナルトをたしなめている顔は明らかに嬉しそう。
「なぅひとりでたべれれるの!!」
自慢気にフォークを握り、カカシに見せるようにラーメンを食べる。
「任務は!?」とか「口寄せって・・・」とかいっていたシカクも火影も、ナルトの食事を固唾を飲んで見守っている・・・無事にカカシの前で成功。満面の笑みでカカシにほめてと言わんばかりに尻尾を振るナルトに「えらい!!天才!!」などと褒めまくっているカカシ・・・ここでフと
「カカシ・・・任務はどうした?」
火影の問いに「おわってちょうど帰ろうとしてたときに口寄せされました」と、どうでも良さそうに応えたカカシは、9本の尻尾を振り振りして喜びを表現しているナルトの向かいに座り、
「今日はナルト用のお子様椅子を買って帰らなきゃね!!」
と、ニヤニヤ・・・
「いしゅいやよ?なぅの尻尾がいたぁの・・・」
どうも背もたれにうまく対応できないらしく、尻尾がナルトの背中と背もたれに挟まれて窮屈で痛いようである。カカシは速攻で影分身を出し、家具屋に特注でお子様椅子を注文し、ついでとばかりに箸やスプーン、コップに至るまで、食事に必要なものをあらかた揃えているようである・・・
「カカシ・・・あまりナルトを甘やかすな。」
シカクが苦言を呈するが、そんなもの聞くカカシではない。己の目の前で食事をする可愛い狐のためであれば、たとえ木の葉の里一個でも買うし、何でもしてあげたい。




「ちちょうちゃまでちた〜」
かわいい食事終了のあいさつに頬笑みながら立ち上がる大人3人。抱っこされることでしか椅子から降りられないナルトを火影がおろそうとすると、ナルトが火影の髭を掴む
「これ!!痛いぞナルト」
さすがに子供の容赦ない力で掴まれれば痛いに決まっている。火影が涙目になりつつもナルトをおろそうとすると
「ジィジ〜!!なぅ任務なの」
火影茫然・・・ナルトが任務?よくわからない・・・と、年長者2名が???としているのをカカシが極上の笑顔で見守っており、余計にわけがわからない。
「かぁしは遠いもあぶにゃいもだめなの!!めっよ〜?」
・・・よくわからない火影に代わり、シカクが通訳をする
「ナルトはカカシが遠くに行く任務も、危ない任務もさせないでほしいのかな?」
ナルトの目を見て聞けば、空の色したきれいな瞳が火影を見上げる
「おながちまちゅ!!」
火影は嘆息したように「今でもだいぶ譲歩しているのじゃが・・・」とつぶやいたが、ナルトが何度となくお願いしてくるので
「なるべくナルトのお願いに応えよう」
と、ナルトの頭を撫でつつもカカシに強烈な視線を向けつつ渋々了承する。
そんな視線などお構いなしにナルトを抱っこして
「では、シカクさん。ありがとうございました。失礼します。火影様。はたけカカシ。任務完了に付き、これより帰宅いたします。では」
「ジィジ〜。カク〜。ばいばい」
可愛くカカシの背中越しに手をふるナルトに手を振り返しつつ、なんだかしっくりこない感じで執務室に戻る2人。
「あれはあれで良いのであろう。甘やかされることに慣れていない子どもなぞ不憫でならん。」
自分とシカクを納得されるために放った言葉は案外あっさりと自分になじんだ。火影とシカクの結論。「なるようにしかならない」と、二人揃ってため息をついた。




数日後、家具職人が作り上げた特注のお子様椅子に座ってご満悦なナルトが「ジィジにもカクにも見せる」と言いだし、椅子をもって火影の執務室に来たカカシとナルト。
その椅子のさりげない装飾、散りばめられた空色の宝石を見て、常識人の大人2名がまた盛大にため息をついたのである・・・。



                       FIN

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