カカシ、犠牲者を出す

けだるい朝。
俺のとなりで寝るナルトはフクフクのほっぺを俺の胸元にうずめて寝てる。
昨日は重労働だったし、ナルトは今日が休みってこともあって俺がガッツリがんばっちゃったから、当然っちゃ当然なんだけどさ。
俺にとっては幸せな時間だし、別段文句もない。
ただただ、このいとしい子供が無事に成長していく様を祈りつつ見守る。
俺にとっては師匠である4代目火影様から託された大事な大事な一人息子だし、なによりいとしい恋人だ。
ほかのなにを差し置いてもまもっていきたいって思うのは、とうぜんだよね?
ずっと大事にしてきた宝物が、やっと手に入って。
それからずっと、こうして一緒に暮らしてきたけれど、一向に愛が薄れないってすごいよね。
むしろ濃くつよくなっていくよ。
そう・・・。
ずっと離れたくない・・・。



「ってなワケで、連れてきちゃった!!」
カカシに姫だっこされて連れてこられているのに起きないナルト。
明らかにおかしいことに気づいてはいても突っ込めないのは、今回のカカシのツーマンセルの相棒『猿飛アスマ』。今回は本来なら中忍の任務をどうしてもという先方の依頼で上忍二人の任務となった。
危険は少ないといっても上忍ふたりが組んでいるくらいである。なにかあると勘ぐっているアスマにとって、正直言って下忍のペーペーなんて邪魔なだけ・・・なによりカカシが笑顔で連れてきちゃったと言って見せたナルトの寝方は異常だったし、アスマは頭痛をグっとこらえて一応聞く。
「それを上忍の任務に連れていくつもりか?」
「問題でも?」
「大ありだろ!!お前はまだまだペーペーのコイツを危険に晒す気か!!」
『チチチチチチチ・・・・』
「も・ん・だ・い・で・も?」
片手にナルト・・・片手に千鳥・・・。
「モンダイナイデス」
結局、起きないナルトを背負ったカカシと共に、アスマが任務対象である書簡を届けに向かう。


「木の葉の上忍様お二人にご足労いただきまして・・・」
そう言って、明らかに忍服の二人に出すには不釣り合いの酒や料理が運ばれてきて、アスマがやばそうにカカシを見ようとした瞬間
「失礼します」
そう言って、部屋の奥から出てきたのはきっと相当の金額を使ってキレイにしたのであろう女性が立っていた。
伏し目がちな目はカカシに向いていて、シズシズ動いているはずなのに、アスマには肉食獣の目にしか見えないギラつきを持っていた。
「この類か・・・」
こっそり吐き捨てたアスマ。
里の上忍となると有力きぞくからの求婚だったり賄賂だったりがよくある。
上忍が味方に付けば警護にぬかりはなくなるし、本来なら見つかれば即座に罰せられることもうまくかくすことも可能になる。
今回は求婚のほうだったようで、おそらく娘と思われる女性は依頼主の隣にするっと座った。
「私の末の娘でして、実るに樹に瑠璃の璃でミジュリです」
なががと血筋や教養を話し出す依頼主を余所にアスマは『瑠璃が木になるようにたわわに実れってか…』なんて考えつつ、隙を探す。
「あの・・・」
ここで珍しくカカシが口を開けた。『お!!一応そこはしっかり断ってくれるのか!!さすがカカシ!やるときはやってくれるな!!』なんて、関心していたのもつかの間・・・
「おれ、男色なんでこの子しか目にはいらないんです。そういうのはコイツへどうぞ」
そういって、さっきまで背中に背負っていたナルトをそっと膝に抱く。
きっと周りには人形のように見えていたであろう。忍の道具として寄り代になる人形は珍しくはない。きっとだれしもが人形とおもうくらいナルトは動かなかった・・・。
そんなナルトにカカシがそっと唇を寄せると、ナルトが目覚めた。
「ここどこぉ?」
「夢の中だよ?」


そういってカカシがその場から風と共に消えていった。
残されたのはアスマと、猛禽類のようにするどい目をもつ親子だった・・・。


FIN

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