カカシ、かえる

「フ〜」
いつものようないつもの夜半過ぎ・・・
カカシに命いっぱい愛情とか独占欲とかすべての思いをぶつけられて今日も今日とてすっかり精も根も尽き果てちゃってるナルトを右に抱いてカカシは片手で器用にたばこを吸う。もちろん、ナルトを起こさないよう細心の注意を払っての喫煙は普通に考えたらむずかしいことでも、なんでも器用にこなすこの男にかかれば、さしたる障害もなく咥えたたばこに愛用のジッポで火をつける。
紫煙をくゆらすその姿は雄そのものの獰猛さを隠して紳士然とした姿に見える。
「・・・かかしぃ?」
なんとなく目を覚ましたナルトに「ごめんね。まだ寝てていいんだよ」って小さく囁いて抱いた背中をあやすようにポンポンと優しくたたく。
そして、眠りに淵に入ろうとしているナルトにそっとキスを落とす。
「う・・・」
小さなうめき声をあげたナルトに、きっと寝る前の抵抗(?)なんだろうなんて解釈を付けて、カカシはそっとたばこをもみ消してそっとナルトを抱き枕のように抱きしめて眠りに付いた。


その朝・・・
ここは木の葉にある上忍の待機所『人生色々』
そこにいる場違いな金髪碧眼の下忍うずまきナルトは、現在入口近くで固まってしまっている・・・
「ナルト?」
いつもは遠慮がちに中をのぞいてはカカシを見つけて走り寄ってひざに座るかわいいナルトが、今日は入り口で立ち止まっている。
その状況に、人生色々に沈黙が走る。
もしも、このまま喧嘩なんてことになってしまったら・・・
もしも、この状況でナルトが別の人のもとへ走ったら・・・
自分たちの命が暴れまわるカカシによって危ぶまれることが上忍にもなるとつぶさにわかるようで、まわりにいる上忍達はナルトの動向を見逃すことのないよう、見ている。
「・・・な・・・ナルト?」
呼ぶ声にハッとしたナルトが、カカシの手元にあるたばこに目を落とす
「・・・ソレ」
カカシはナルトの指さしたたばこを見つめて、とりあえず灰を落とす
「コレ?昨日変えたんだ。今までは剣戸(けんと)だったんだけど、羅愛倶(らあく)にしてみた。こっちのほうがなんとなく気に入ったんだよねぇ・・・」
普段はあまりたばこを吸わないカカシであるが、それなりにこだわりがあったらしく、ずっと剣戸ばかりだったのであるが、最近どこかの任務中にもらった羅愛倶が気に入って、昨日やっとストックのたばこが切れたから、あたらしく羅愛倶に切り替えたところだったのである。
「・・・俺ってば昨日、口の中がイガイガする味がしたんだってば。
カカシ・・・そのイガイガとおんなじにおいがそれからするってば・・・昨日俺にチューした?」
もはや迫っている質問に、カカシは嘘を言うわけにもいかず、素直にうなずけば、カカシはナルトによって断罪される
「カカシ・・・そのたばこはまずいってば!!その味とにおいが消えるまで俺ってば一人部屋に居るから、カカシはそのたばこ吸い終わったらもとにやつにするってば!!!
いや!!!もうたばこ止めるってばよ!!!俺ってば煙草味のチューは好きじゃねぇんだってば!!」
言い捨ててナルトは本来ならカカシの待機時間が終わってから一緒に帰るはずだった道をさっさとかえってしまい、なおかつあり得ないことに家に帰ってもナルトはそばに来てくれてもさわらせてもくれるのに、カカシガそっと唇を近づけると嫌がるそぶりを見せる・・・
あまつさえ、いざ寝ようとしてナルトを抱き込んでベッドルームに入ろうとしたら
「カカシ・・・今日はいやだってば」
なんて言われて、さっさと一人部屋へはいって行ってしまったのである。
カカシとしては面白くない。
しかし、己がたばこを変えたのが原因・・・
仕方ないとばかりに寝室でひとりねころがってみても落ち着かない・・・


「ナルト!!!俺!たばこ控えるから!!だっこさせてよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「カカシ・・・今日は無理だってば。だっておれってばたばこ味のイガイガきらいなんだってば!!」
すっかりトラウマのように拒否されてしまったカカシは、その日キングサイズのベッドの上でまるでおとめのように枕を濡らして泣いたとか・・・

[ 63/81 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



トップへ


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -