カカシ、こがれる

木の葉の里にも、やってきましたバレンタイン。世の女性たちはこぞってチョコを買って、意中の人、友達、親族にプレゼントします。
そして、木の葉の色男、カカシはと言えば・・・
「・・・カカシさん。受けとってください!!」
今年もチョコを渡すために女の子たちが群がっていた・・・もちろん、みんなナルトがいることは承知の上ではあるが、あわよくば・・・とか思う気持ちと、イベント以外ではなかなか受け取ってもらえないプレゼントなので、女子たちは奮起して渡しに来る。
数年前は、どこかの国のお嬢様が、バレンタインを一緒に過ごしたいという理由でとんでもない金額でカカシ指名の依頼を出したとか、はたまたどっかの国のお姫様は、カカシへチョコを渡すために、カカシを誘拐しようと暗部一個小隊を雇ったとか・・・
とにかく、バレンタインの乙女たちは必死なのである。
「・・・面倒だなぁ・・・」
上忍待機所にてグチグチしているカカシ。そこに、アスマが入ってくる。
「もう、入口にコレ置いとけよ」
アスマが持っているのは『カカシ行き』と書かれた段ボール。
そこにはすでに数個のチョコレートが入っている。見てみれば、サクラ、イノ、ヒナタ、紅・・・見知った女子からのチョコであった。しかも、メモ紙でホワイトデーの催促付きの・・・
「そだね・・・もういちいち受け取るの面倒だし・・・」
上忍待機所の入り口横に置かれた段ボールが早々にいっぱいになる。
「じゃ、今日は定時で上がります!!」
さっさと宣言して、カカシが段ボールを持って瞬身で消える。
「・・・あいつ。チョコなんてくわねぇのに・・・」
残ったアスマの疑問にこたえる者はなく、上忍待機所に静寂が戻った・・・


「ただいま〜」
玄関の外からも香る濃厚なチョコレートの香りにカカシが妄想をガッツリ膨らませて帰宅してみれば、ナルトが出迎える。
「おかえりカカシ・・・いっぱいもらったな」
ナルトがカカシの手にある段ボールを見て、苦笑する。
「ナルトはチョコ好きデショ?俺、こんなに食べないから、食べていいよ?」
(普通の女のやったらきっと嫌な顔をするけど、ナルトはこういうのいやがらないんだよね・・・捨てるよりずっといいって言ってくれてるし)
カカシにとってチョコなど、まったく不必要なものでしかないが、ナルトがよろこぶのであれば必要なモノになる。
「・・・キレイなのばっか」
段ボールの中を見て、なんだかしょぼんとしているナルトに、カカシは妄想にふけっているため気付かない・・・
「じゃ、お風呂はいろっか?」
カカシと共に風呂に入り、ご飯を食べて、テレビをみて・・・
「カカシ・・・俺寝るね?」
さっさと眠るナルト
「え!?」
カカシがショック!!!といった顔でナルトを見ていても、ナルトはさっさと寝室に入る。
(俺が作った不格好なチョコなんて、あのキレイな箱に入ったチョコの中には入れられない・・・)
「ハァ・・・おやすみ」
カカシが嘆息しつつ隣に入ってきても、うしろからギュッと抱きしめてきても、ナルトは泣きながら己から香るかすかなチョコレートの香りを苦い思いで味わった・・・



「ア〜ス〜マ〜・・・(泣)」
カカシは泣きながら上忍待機所に入っていけば、そこにはすでにアスマがいた
「なんだよ!?」
カカシの顔に戸惑いつつ、アスマが居住まいを正した。
「昨日はシカマルがおまえんちのキッチン借りてナルトとチョコを作ったんだと・・・シカマルが邪魔したな。」
その一言にカカシがさらに号泣し出す。
「アスマ〜!!!俺はナルトに嫌われたのかなぁ!!!!!」
事の経緯をはなしてみれば、アスマが目を見開いて、唸る・・・
「むむぅ・・・それは・・・なんというか・・・恥ずかしくなったんじゃねぇか?シカマルが持ってきたチョコは味は良かったが、見た目はちょっと・・・なチョコでなぁ?お前が持って帰った高級チョコの山を見ちまったら、あげづらかったんだろうよ・・・」
アスマのもっともな見解が目からウロコであったかのようで、カカシにしては珍しく
「ありがとアスマ」
なんていう気持ちの悪い一言を残したまま、さっさと瞬身で消えてしまった・・・


「ハァァ・・・あげらんなかったってば・・・ってうわっ!!!!」
休日のために庭で釣りをするナルト。その横でいきなり発生する旋毛風といえば・・・
「カカシ!?」
ナルトは、釣竿を戻し、カカシの姿を風の中に見出して驚くとともに気まづげに下を向く。
「ナァルト・・・俺、ほしいモノがあるんだけど・・・」
その顔はひどくにこやかで、それでいて怖い。
「な・・・なん・・・だってば・・・?」
わかりきったこたえなのに、ナルトは素知らぬふりで聞いてみる。
「チョコ(っていうか、できればチョコまみれのナルト)」
一部ナルトには聞こえない音声にお送りいたします。
即答のこたえに、ナルトはちょっと涙目になりつつ、
「ないってば!!」
といって、プライベートルームに走り去る。


「カ・・・カカシ!!!何やってるんだってばよ!!!」
ナルトが走って帰ってきた部屋には、カカシと、数匹の忍犬が家探していた。
「あぁ・・・チョコさがしてんの」
なんの悪びれもなくいうカカシに、こっちが本物で、殺気のは影分身だということと、逃げられないと言うと子を理解したナルトは、机の引き出しから、不格好な数個のトリュフが入った袋を取り出し・・・
「一日・・・遅いけど・・・」
そういって照れたように渡した。
「誰からどんなものもらうより、ナルトからのチョコが一番嬉しいよ・・・ありがとう」
もらいもののチョコに一切手を付けていないカカシが、ナルトのトリュフを口にして、ほほ笑んだ
「おいしいね」
ナルトもようやく頬笑みかえし、二人は幸せそうに笑い合っていた・・・
「なぇナルト・・・俺さ・・・お願いがあるん・だ・け・ど☆待たされた分、俺のお願い聞いてくれる?」
ナルトの頬がひきつり、強制的に風呂場に連行されるナルトに、耳聡い忍犬たちが不憫そうな視線を送っていた・・・



   FIN
後の言葉は、御想像にお任せします。。。


[ 48/81 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



トップへ


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -