カカシさんと火影さん

『ピュ〜ルルルル』
木の葉の商店街を疾走するカカシの頭上に、大きな鳥が飛んでいた。
「チッ」と舌打ちをしつつ、カカシは火影の元へ向かう。



「強大なチャクラを感じ取って暗部を向かわせたが・・・カカシ・・・暗部の奴らの説明がようわからん。九尾が人間化した・・・とかなんとか・・・」
三代目は頭を抱え、執務室で唸っている。カカシは事の顛末を説明した。
「ふむ。今のところは大丈夫だというのじゃな?」
信用していないというか、話したところでにわかには信じがたい内容であることをカカシも承知である。
「パックン。ヨウコさんと此処に来るようにナルトに伝えて」
カカシはパックンに要件を伝えると、パックンは煙と共に消えた





「ヨウコさん。カカシ先生が来いって」
パックンから伝言を受け取り、ナルトはジャージをはおりながらヨウコに声をかける
「ナルトや。薄着は良くないぞ?」
そこまで寒くはないのだが、心配されることが嬉しいナルトはいそいそジャージの中にもう一枚着込む。
「よし!!行くってばよ」
と、ナルトが玄関に向かったその時『ドロンッ』と、気が付けばカカシと火影の間にヨウコとパックンと共に立っていた
「カカシ先生?」
「ナルト?瞬身つかえたっけ?」
カカシもナルトもびっくりである。
「我は一応これでも神に近しいものじゃぞ?人間に出来て我に出来んことはない」
「・・・ヨウコさんが連れてきたわけね・・・」
「そうじゃ。カカシのチャクラをたどっただけじゃ」
こともなげにいうヨウコにカカシは「・・・腐っても九尾・・・」と、どこかのんびりと考えていた。




「・・・こ・・・これが九尾か?」
ついていけないのは三代目火影である。目の前に現れたのは、赤い着物を羽織り、長い赤毛に黄色い耳を付け、背後には立派な9本の尻尾を持った妙齢の女性。
纏うチャクラに凶悪さはないが、明らかに人外の空気を纏っている・・・が、如何せん拍子抜けである。ぶっちゃけ「違う!!」これが三代目の感想である。


「そなたが今代の火影かぇ?」
ヨウコは三代目を見つめる。
その目は何かを見極めているかのように眇められている。三代目はうなずく。
「いかにも。」
ヨウコはにこりとほほ笑み「よしなに」とあいさつ代わりに尻尾を振る。
「我はヨウコと申す。ナルトを守護するために顕現したが、我の守護はそれほどの必要性もないじゃろう。我は幻想界とこの世を行き来しつつナルトと共にあろうと思っておる。」
「ヨウコさんどっか行っちゃうの!?」
事の成り行きを見ていたナルトは身を乗り出してヨウコの目を見る。
「ナルトや・・・我は常にソナタと共にある。我のチャクラの大半はそなたの腹にあるし、我の本体もそなたの腹に封印されておる故、どこにも行けん。だが、こうして意志の一部でそなたの外に出たが、この世界の空気も悪くはない故、我とて色々とやってみたいことがあるのじゃ。たまには幻想界にも帰りたいしのう・・・」
ヨウコはナルトの両頬に手を添えて話す。ナルトは納得がいかないとでも言うようにぶすくれている。
「それに、三人で住むわきにもいかないであろう?」
ナルトも一心に見つめていたヨウコはふとカカシの方を見た。カカシは「お見通しか」と肩を落としつつ、ナルトの横に立つ。
「ナルト。俺と一緒に俺ん家に住もう?」



「何をいっとるんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
突然の絶叫は3代目火影から
「そなたのようなろくでなしにナルトをやれるか!!!!」
「いいんです!!ナルトは俺を好きだし、俺はもうナルト一筋になるんです!!」
「何をいっとるのじゃ!!ナルトはまだ12歳じゃぞ!!手を出すなんて犯罪じゃ!!」
「アイがあればどんな障害も」
「なら〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!」
「じっちゃん?」
3代目はナルトとカカシの間に割ってっ入り、邪魔をする。
「声をかけてくる者はすべておいしく頂き、木の葉の遊郭すべてになじみがいるといわれている下半身無節操ろくでなしに可愛いナルトはやれん!!」
ヨウコはそっとナルトの耳をふさぎ、3代目の暴露からナルトを守る。「ナルトや。我はカカシと火影と少々里の今後について話さねばならん。少しの間、遊んでおいで。」と、ヨウコはナルトを非難させることに成功したのを確認すると、里長とエリート忍者の不毛な言い争いを外に漏らさぬように空間に結界を張った。


「二人ともおよしや。」
ヨウコは二人の頭を尾でたたく。
「ヨウコさんは黙ってって!!俺はナルトが好きなの!あんなに危険な家にはいさせられないの!!このくそジジィ!!里抜けするぞ!!」
「なんじゃと変態!!貴様は里抜けでもなんでもせぃ!!ナルトは置いて逝け!!」
『バッチィィィィン!!!!!!!!』
「およしや!!」
大きな音と共に二人の頭に振り下ろされたのは九尾のチャクラがこもった尻尾・・・
二人はそのまま気を失いましたとさ・・・




「せんせい?・・・俺ってば置いてかれちゃうの?カカシ先生と居たいってばよう・・・」
三代目火影が目が覚めるとそこにはサメザメ泣くナルトと困り果てるカカシ・・・
「だから・・・あれは脅しで本当に里抜けはしな〜いよ」
「でも・・・ヒック・・・うぅぅ・・・」
ヨウコもカカシも困り果てるくらいに泣くナルト。火影は心配げにナルトを見やった。
「吾子や。落ち着きなさい。カカシは吾子を置いて行ったりはせん。心配なら一緒に住んで見張っていればよかろう?」
ヨウコの爆弾発言に猛烈にうなずくカカシと白目をむいて否定する火影
「火影もきっと許してくれようぞ?里一番のエリートが逃げ出さぬよう見張ってくれるのであるから・・・のう?火影や?」
『吾子を泣かせるのであれば里を滅ぼす』
通常は上級の暗部にしか使えないはずの話術で火影に話しかけるヨウコは心なしかチャクラが禍々しく、言葉が本気であることを物語っている。
「そ・・・そうじゃなナルト・・・カカシを見張っておくれ・・・ハハハ・・・」



「カカシせんせぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・俺見張っちゃうってばよ!!置いてったら泣くってば」
「なぁぁぁるとぉぉぉぉぉぉぉ!!置いてかないよ〜ずっと一緒だよ〜一緒に大人の階段を駆け上がろうね(ニヤリ)」
「?」
「なんでもな〜いよ?ナ〜ルト。一緒に帰ろう?」
「カカシせんせぇ?」
「ナ〜ルト」(抱きッ)
判断を誤ったような気がする火影をヨウコは尻尾であやすように背中をなでる
「ナルトは今までの分も甘やかされて良いのじゃ。火影や・・・カカシはあれで分かっておる・・・はずじゃ」
ヨウコは生れてより400年。はじめて他人のフォローをしてみたが見事に失敗
「ナルト〜!!!!!!!」
この日、三代目火影の大きな、そして悲痛な叫びが木の葉中に響いたという・・・。

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