カカシ、戦闘態勢2

「化け物を渡せ!!!」
叫び声と共にドアを爆破して侵入してきたのは、カカシ達上忍にとっては、上忍待機所で見知った顔。そして、その顔には一様に殺伐とした殺意が滲んでいる。
「あ〜らら・・・上忍同士の私情は厳禁デショ?」
カカシはあくまで戦闘態勢ではあるが、口調は至って普段通りであり、まったくもって緊張は感じられない。強いて言うのであれば、サスケとナルトの小競り合いを停めるような口調である・・・放っている殺気は半端なく、年嵩の上忍に隠れて後方にいる中忍のうち数人が失神してしまうほどである。
「カカシや・・・化け物とは我の事かぇ?」
スッとカカシの後方からヨウコが場に出ていく。その妖気はカカシの殺気以上の威力を持って、年嵩の上忍たちを威圧する。
「お前は本体じゃない!!本体の入ってる化け物をよこせ!!!」
なんとか己を保っている上忍の先頭が叫ぶ。
「・・・我が吾子は、そなたらのために我を一身に背負わされたのじゃぞ!!生まれたその日から己で選んでもいない運命を背負わされ、だれにも愛されず、意味もわからぬままに忌み子として扱われる苦しさを味わって生きてきたのじゃぞ!!!やっと仲間ができたのじゃ!!それを貴様らは邪魔しようというのか!!!!!」
ヨウコの怒気が膨れ上がり、ヨウコの周りには赤黒い妖気が舞う。
「化け物めっ!!!」
「忍になるくらいなら今殺してやる!!」
「力を付ける前に!!」
「俺の息子と女房を返せ!!!!」
まったくヨウコの言葉など聞こえぬかのように、敵忍が口々にヨウコやナルトを罵る。ここに来た者は皆肉親や親友を、殺された者たちなのである。
しかし、カカシとて親友を亡くし、唯一の支えで目標であった師匠を失っている。それでも、ナルトを守り、ヨウコを受け入れているのである。
「ま、考え方の違いかねぇ・・・俺なんて、ナルトが生きてるだけで幸せヨ?どんな辛酸舐めても生きてて、師匠の血を残してくれて、まっすぐに明るく育ってくれて嬉しいよ?むしろ、過去にこだわって罪もないナルトに復讐だの、天誅だのって言ってるお前ら大人の方が化け物だよ。過去にとらわれた愚かな化け物・・・ナルトに出会う前の俺みたい・・・」
カカシは一向に武器から手を離さない敵忍に、諭すように語る・・・
しかし、怒りが精神を乗っ取っている敵忍は聞くことをせず、それぞれの武器を握ったままにじり寄ってくる。結界が双方の中間に存在し、それが間合いとして存在する。にじり寄る敵忍たちに、カカシは額当てをグイッとあげて車輪眼を出す。
「カカシよ・・・我がナルトとナルトの友を守ろう。全力で戦え。」
スッとヨウコが隊列の後方にいるシカマルやサクラのもとへ行く。カカシはうなずいて、テンゾウの背にあった忍刀を抜く。
それが合図であったかのように、敵忍たちが一斉に結界に向かって走り出した。
絶対的恐怖の対象であったヨウコが隊列の後方に移動したことにより、硬直していた身体が動き出したのであろう。
テンゾウが木遁で進路を阻めば、火遁で焼き払われる。
結界を貼っている札を守るべく、カカシとアスマが技を繰り出すも、多勢に無勢。結界が破られる。
影分身を出し、人数を倍増させている敵忍に対し、チャクラ温存のために影分身を出さずに対するカカシら上忍。
紅は幻術で敵をまどわし同志討ちさせる。
カカシとアスマは忍刀で敵を打つ。
後方に控える下忍はそれぞれの得意な忍術でカカシやアスマをすり抜けた連中を撃破する。
「アスマ先生!!大変!!こいつらここを爆破するつもりよ!!」
心転身で敵忍を乗っ取って攻撃参加していたイノが、敵のポケットから出てきた見取り図と火薬を投げる。そのまま心転身を解き、後方に戻れば、シカマルが影縛りで思うように動かしてる敵の上忍を敵忍の前に立たせてアスマの盾にし、その間に考える・・・
「爆破・・・めんどくせぇな・・・おい、キバ!!赤丸にこの火薬のにおいをたどらせろ!!サクラはキバと一緒に行って爆弾を壊せ!!サクラの知識ならイケるはずだ。最悪は森に向かって投げとけ。残りは敵の殲滅だ!!!」
「「「おう!!」」」
シカマルの指示と同時に動き出す面々。
最前線にカカシ、紅、アスマ、テンゾウ・中盤にサスケ、チョウジ、シノ、シカマル。
もっともナルトに近い場所にヒナタ、ヨウコ、いの。
それぞれの目の前の敵を倒すことに集中し、最後部の三人は敵の位置を伝える。
「カカシ先生!!後方30℃からクナイ!!」
百眼で状況把握し、敵忍を倒しつつも状況を見方に伝えるヒナタと、心転身で本体をヨウコに守られたイノが敵忍に交じって交戦することで敵忍の疑心暗鬼と同志討ちを誘う。
「カカシ!!俺の生徒は優秀だろう!!」
「あら!!私の生徒だって優秀よ?」
変な自慢の始まった最前線の上忍衆は、カカシの苦笑いもそこそこに、敵を切っては「うちのシカマルは頭がいい」敵を蹴っては「うちのヒナタは百眼使えるのに奥ゆかしくてかわいい」などと始まり、かわいいという単語に対して、カカシが反応し、「それをいうならナルトが一番かわいい」とか張りあいだし、いつしか己の生徒自慢が始まった・・・
もちろん、手は確実に敵を仕留め、目は敵を追い、足は常に動き回っている。
そんな会話を聞きながら、テンゾウが
「印ができました!!みなさんナルト君のそばに!!」
叫ぶと同時に、てんでバラバラであった味方がいつの間にかナルトのそばに集結している。
「木遁!!木衝壁!!」
素早く印を組んだテンゾウの足元から多くの木が出現し、壁のようにそろって成長しそびえたつ。
「火遁!!業火の術!!」
負けじと敵忍が炎系の技を出してくるが、いつの間にか火遁使いが著しく人数を減らしていた。
「くそ!!あいつら火遁使いを中心に攻撃してやがったのか!!」

いったん戦闘を停めた。
しかし、木遁がいつまでも持つものではない。
それぞれに消耗したチャクラを回復すべく、静かにその場に座り、手傷をヨウコに癒されつつ、ただ無言で、次の戦闘に備える・・・





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