カカシさんの逆襲

ナルトが里の忌み子として扱われているのも知ってる。里人が目をつぶって見ないようにしている不都合な事実も知っている。ナルトが身を持って封印してくれているものの強大さ・・・


「ヨウコさん!!刺身にする前の鯵食べたでしょ!!!」
「我は知らんぞ・・・鯵3尾の真ん中の一番大きいモノなぞくっとらん!!」
そして・・・喰い意地と嘘の下手さも知っている・・・


今日も今日とてはたけ家は平和である。今日はナルトが下忍仲間と出かけているので、カカシは今朝アスマからもらった釣りの成果をさばいている途中であった。しかし、ちょっと目を離したすきに、一尾の味が骨を残してきれいになくなっているのである・・・そして、9本の尻尾を持つ美女の顔には鱗が・・・
カカシは仕方なく、ヨウコの分の刺身を減らして盛り付ける。そろそろナルトがおなかをすかせて帰ってくるはずなのである。
『ピーンポーン』
いつもなら鳴らさずに入ってくるはずなのに・・・とか疑問に持ちつつ出迎えるカカシ。そこには、ナルトをおぶったシカマルと、それに付き添うキバ。ナルトは額から血を流して気を寝ている。
「何があったの?」
カカシはなるべく殺気を抑えて対応しているが、シカマルやキバをおびえさせるほどの殺気が隠し切れていないあたりが、カカシの動揺を表している。
「なんか・・・公園で遊んでたら突然石が飛んできて、ナルトの頭に当たって、そんで病院じゃなくて家に帰りたいってナルトが言うから、大事をとっておぶってきたら途中で寝ちゃったんだ・・・」
シカマルの説明でいろいろとわかったカカシは頭を抱えて、「送ってくれてありがとね」と、言ってナルトを引き取り、ベッドに寝かす。
「ヨウコさん・・・ナルトに石投げたひとわかる?」
ヨウコはナルトの額に手を当てて石が飛んできた状況を読み取る。




「ナルト!!危ない!!」
ナルトには見えていた。里人が自分に向けて投げた石が・・・投げた時の顔が・・・いくら新米でも忍であるナルトにはよけられたはずの石をよけずに当たる。よけてしまえば第2、第3と投げてくるだろうし、そのことによって大切な友人を傷つけるかもしれない恐怖にナルトは自ら当たるという選択をした。そして、そのまま心の衝撃に耐えきれずに座り込み、
「カカシ・・・カカシ・・・」
小さな声でささやけば、集まってきた仲間たちは顔を合わせて、「病院行くか?」とか「俺んち近いから・・・」とか相談し合っている。
「おうちに帰りたい・・・」
小さな声でささやくナルトに、シカマルは背中を差し出し、キバがナルトが脱いだジャージを持ってついていく。それを見おくる面々と、その影でしたり顔の里人・・・




「カカシ・・・そなたに情報を渡そう。額をお出し。」
素直に前髪をずらせば、その額に手を当てて先ほど読み取った情報を送る。
「・・・かわいそうにのう・・・」
ヨウコはナルトの額を撫でて、一瞬憐みの目を向けると、その視線をカカシに合わせ、うなずく。
「ヤルか?それとも、もっと恐ろしい目にあわせてやるか?」
ヨウコの問いに、カカシはニヤリと笑い、「今日はこれをつかおうか」と言って、キッチンにいたはずの鯵の骨取り出す。
「ヨウコさん。これをとがらせられない?」
「我の爪とキバを甘く見るなよ?」
受け取って爪とキバで鯵の骨を尖らせていくヨウコに、カカシはニヤニヤしながら「精神と肉体両方に制裁を!!」とか叫んでいる。




翌日
木の葉の里の木の葉新聞一面に大きく載った記事は
『鯵の骨が頭に刺さり入院!?』
昨日ナルトに石を投げた男が、同じ位置に鯵の骨を刺して病院に担ぎ込まれている写真付きで報道された。木の葉の珍事件として、その後大きく取り上げられ、傷自体はそうでもなかったはずなの、その男の病室には面会謝絶の札がかかっていたという・・・



「カカシ・・・俺ってばもう外でない!!カカシと一緒じゃなきゃ出ない!!」
なんとも悲しげに啼いているナルトを慰めつつ、ナルトに傷が付いたのは許し難いが、結局はなんだかおいしい感じになっているので、ちょっと・・・いやかなりご満悦のカカシなのでした。



              FIN

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