カカシさん対アスマさん

ここは木の葉の釣具店・・・仲良く竿を見ている(バ)カップルが1組。
「ナルト〜。これ初心者用だって!!」
カカシが持ってきたのはナルトの瞳と同じ空の色した釣竿。きらきらした瞳で「かっこいいってば!!」とはしゃいで竿を握り、ぶんぶんと振り回したり、さすったり・・・「ああやって俺の竿もさすってくんないかなぁ・・・」とか不埒な考えに浸っていたカカシは、背後にいた客にぶつかってしまう
「あっ!!すいませ・・・・・・・・・なんで釣具屋に熊?」
ぶつかった客は猿飛アスマ。カカシの同僚で第10班の担当上忍で・・・
「よう。ナルトじゃねぇか」
可愛げのないIQちょんまげの恋人・・・
「シカマル〜!!」
ナルトはシカマルの元へ走り、いましがたカカシに選んでもらった釣竿を見せる。同様にして、シカマルもナルトに、先ほどアスマに選んでもらったルアーを見せて、お互いに「いいなぁ」と羨ましがっている・・・大人げない上忍に火が付いた・・・
「ナルト!!ルアーも買おうね!!」
「シカマル!!今日はロッドも買おう!!」
お互いに名の知れた上忍であり、正直なところ一生楽に暮らせるくらいの蓄えはある。現在は後進の指導に当たっているのも、そういう理由からなのである。
それに、かわいい恋人が出来て日々心配で日常生活も任務も一緒でないといつ誰に横恋慕されるかわからないとか、変な気をもんでいる大人たちはとにかく恋人に甘い。世界で一番愛し、愛されているというお門違いな自信は、時に上忍同士の小競り合いを生むらしい・・・。
「じゃあ、うちは釣竿とルアーとロッドとリールとナルト用の釣り衣装一式!!」
「フン!!こっちはそれにテント!!」
「じゃあ、浜辺で釣った魚を調理できるBBQセットも付ける!!」
「釣りに行くように車を買う!!」
「こっちは船!!」
お子様二人はポカンと普段は冷静で優しい恋人の子供っぽい部分に見つめている。そして店員も、わずか5分にして過去最高金額の売り上げを叩き出してはいるが、件の客以外が店外に非難するという非常事態に右往左往している。

『ガー・・・イラッシャイマセ』
自動ドアの開く音と同時に聞こえた機械的な声。そして、入ってきたのは神々しい9本の尻尾を持った美女と、鼻の頭に傷を持つ優しげな青年・・・木の葉の里の異色(バ)カップルである。
「イルカや・・・あの池で釣りとやらをするにはあんなに色々と揃えねばならぬのかぇ?」
カカシとアスマのバックに積まれた商品の山にヨウコは「イルカ!!我はそなたに借金させる気はないぞ!!」と尻尾を丸めてキューキューと悲鳴をあげている。一方でその声に「ハッ!!」とか声をあげて元の目的を思い出したナルトがカカシに抱きつく。
「カカシ先生!!やめろってば!!俺はあの池で釣りするってば!!船とか立派な釣り道具なんていらないってば!!釣り竿と糸と針だけあれば十分だてばよ!!」
叫ぶように止めに入ったナルトに我に還ったカカシは
「そうだね・・・ナルトは俺たちの家で釣りできればいいんだもんね?アスマみたいにわざわざ出かけなくても釣りできるしね?」
明らかな皮肉にもナルトは気づかずに「そうだってば!!」とか元気に返事をして、カカシが集めに集めた商品を一個一個片づける。
一方で面白くないのはアスマである。
「俺たちはデートをたくさんするからな。そっちみたいに引きこもって恋人をどこにも連れてってやれない甲斐性なしと違って・・・」
ちらりとカカシを見れば、明らかに額に青筋が立ち、アスマに向けて殺気を放っている。子どもたちはせっせとお互いの恋人が集めた商品を棚に戻したり、こっそり欲しいものをかごに入れたりで大忙しで気付いていないが、この殺伐としたさっき放たれる空気に、ついに店員も逃げ出し、一人店内に残された店長も、なにやら紙に遺言を書き始めた。
『ガツン!!!!』
その空気に終止符を打ったのはヨウコさんの尻尾
「なんじゃ!!せっかくイルカが釣った魚なら生で食べても良いというから、ワザワザデートしに来たというに、そなたらは我の邪魔をしたのかぇ?それならば我とて容赦はせぬぞ!!!!!!!」
グワッと立ち込める九尾の赤いチャクラに、一瞬にして場が凍りつく。
「「すいませんでした」」
土下座する勢いでヨウコに謝り倒す大人二人に、やっと商品を戻し終えた子どもたちはきょとんとしてお互いの顔を見合わせ、口々に「なにやってんだか」とつぶやいて、各々買ってほしかったモノを買ってもらい、荷物を抱えて嬉ししそうに店を出た。
後に残されたのは茫然と意識も定かじゃない状態でレジを打つ店長と、ニコニコしながら釣り具を選んでもらっているヨウコと、嬉しそうに釣り具を選んでやっているイルカ。
店の崩壊と、店長の命を救った恩人として、ヨウコは店から初心者用の釣り具セット一式をもらい、ついでにイルカに選んでもらった釣竿ももらって、二人は「なんだか悪いなぁ」とか口々に礼を述べ、店を後にする。



「それ!!」
池のほとりにはカカシとナルト。対岸にはイルカとヨウコ。先ほどから釣りを始めた4人であるが、カカシとヨウコは飽きだし、互いの恋人にちょっかいを掛けている。
『ピーンポーン』
飽き飽きしていたカカシは面倒ながら楽しそうに釣り糸を見ているナルトを慮ってインターフォンに出る。
「はい。」
「カカシ先生。ちは。さっきナルトに招待されてきました」
インターフォンの相手はシカマルだった。しかも気配は消しているがアスマもいるのでろう。
「・・・入って」
カカシがインターフォンを操作してドアを開ければ、シカマルがナルトの方へ歩み寄り、
「ナルト・・・来てやったぜ!!約束通り釣り勝負だ!!」
釣り具をセットして、お互いに「せーの!!」と声を出して竿を投げ入れてどちらが先に釣れるか競争している一方、
「ナルトは忍耐力があるから、きっとナルトの勝ちだな・・・」
「いや・・・シカマルは頭がいいからシカマルの勝ちだな・・・」
お互いの愛しい恋人の自慢大会が始まっていた。
「ナルトは朝起きると『おぱよぉ』って言ってくるんだぞ!!かわいいだろう!!」
「シカマルなんて俺が将棋で勝っちまうとすぐにむくれるんだぞ!!可愛いだろう!!」
「イヤイヤ!!ナルトは・・・!!」
「なんの!!シカマルは・・・!!」
エンドレス自慢・・・
対岸で様子を見ていたイルカは、肩を震わせ、それを見てとったヨウコが「止めてくる」と言って動き出せば、イルカがヨウコの肩を掴んだ。
「ヨウコさんなんて、僕がお稲荷さんを作らないと『お稲荷さん作ってくれなかったら里を滅ぼす』って脅してくるんですよ!!かわいいでしょ!!」
対岸から聞こえてきたとんでもない言葉に一同騒然・・・イルカの肩・・・いや、お稲荷さんに里の未来がかかっていたなんて・・・しかも、それを可愛いと言えるイルカ・・・なんだかばからしくなってきた面々は、白けたようで、釣りに没頭していった。
そんな中、満足げにニコニコして「ヨウコさんが一番かわいい」とかささやいているイルカ。そして「当然じゃ!!」とか言ってされるがままのヨウコ。
木の葉は今日も幸せ(バ)カップルであふれています・・・



         FIN

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