カカシさんと九尾の狐

此処は小さな忍の里。名を「木の葉」
この小さな里を大きな九尾の狐が襲った・・・
そして、一人の英雄が己の赤子のへそに九尾を封印することで事態を収束させた。



「お前のせいで!!!」
ひた走る金色を3人の大人が追いかける。
「ハァハァ・・・しつこいってば・・・ハァハァ・・・」
金色は狂ったように追いかけてくる大人に言いようのない恐怖を感じ、ただただひたすらに逃げたが、忍びといえどまだまだ子供
「巻いたってば?」
立ち止り背後を確認しようとした途端、気配を消した忍が自分の背後に立っていたことに気付いた。
忍は無言でナルトの髪を掴み、地べたに投げつけるように髪を話したかと思うと、素早く口に布を巻き、手足を縛った。
そこで先ほどの大人3人が追いついてきた
「ハァハァ・・・まったく。化け物がちょこちょこと街を歩くなっ!!」
息も絶え絶え、血走った目でナルトを見た。
「契約は以上で完了だ」
それまで無言だった忍が口を開いた。
聞いたことのない声、見たことのない顔、下から見上げているナルトには見えた
木の葉に横一文字の傷をつけた額当てを・・・
「ん〜っ!!!!!」
ナルトは目いっぱい叫んだつもりが、ほとんどを布に吸収されてしまった。「里に抜け忍を入れてでも捕まえたかったのか・・・」ナルトは大人たちを睨むが、目の前で多額の金銭が行き来し、忍は音もなく消えていった。



「さて化け物・・・どうされたい?」
大人たちの手には、刃物が握られている。
先ほどから何回やっても抜けないロープ。何回やってもねれないチャクラ。明らかにナルトを逃がさない算段は目に見えて、ナルトは目を見開いてあらん限りに威嚇する。
「うぅっ!!」
「ははは・・・化け物はうなってろ!!おまえはこの世で一番苦しんで死ぬがいい!!」
一人の男がナルトの服を切り裂いた。
露わになった印を忌々しげに見つめ、それ目がけて蹴りを放つ。それが合図のように、大人たちはひたすらにナルトを蹴る。


「       」


ナルトの中で声がした。
しかし、己を守るのが精いっぱいのナルトにはかすかに聞こえる声など聞くことはできない。
血を吐き、骨が折れ、目の前が真っ赤に染まるころ、大人たちは蹴ることを辞めた。
「この化け物まだいきてやがる」
そういった男は、手に持ったナイフをナルトの脚に突き刺す。
「ぐがぁぁぁぁぁっ!!!」
ナルトの絶叫を愉悦を含んだ壊れた顔が3つ。ただおかしそうにみつめる。
一人は手のひらを貫いた。結ばれていた両手を貫通し、ナルトは声すら上げられないほどの痛みに耐える。



「・・・ぃか・・・」


先ほどよりも大きな声で、誰かが何かを言っている。ナルトは遠ざかる意識の中、ただただその声に助けを求める


「・・・たいか・・・」


頭の中に響く声・・・応えてもいいのだろうか。自分の中にいるのは化け狐しかない。応えてもいいのだろうか・・・逡巡しているのもつかの間
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
ナルトの腹に刃物が突き刺さる。


「そんなに死にたいのか?」
苦しい・・・
痛い・・・
死にたい・・・
死ねない・・・
殺して・・・


声にこたえたナルトの体から禍々しい赤いチャクラが噴出する。
大きな耳と多くの尾を形どり、小さな里の奥深くに刃物を刺さった体を横たえるナルトを守るようにナルトの前にその体を向ける。
3人の大人たちはただ震えあがり、自分たちの仕出かしたことの重大さを認識する。
「吾子を傷つけるのはなぜじゃ・・・」
赤いチャクラは徐々に人の形をとった。
大人たちに向けた背には9本の立派な尾があるが、明らかに先ほどの禍々しい姿ではない。
ナルトに刺さった刃物を抜き、傷に手を当て治癒していくそのまなざしはひどく傷ついたように眇められていた。


「・・・お前が化け狐だってば?」
出血がひどく顔色は死人のように白いナルトが語りかける
「お前が呼んだんだってば?」
「左様。我が吾子よ・・・
ずっとそなたと共にいた。ずっとそなたの心に寄り添っておった。
もう良い。こんな里捨ててしまえ。そなたを傷つけ、嘲り、己のことしか考えておらん里など捨ててしまえ。我がそなたを守ってやろう。」
「里は壊しちゃだめだってば。じっちゃんにおこられるってばよ?」
ナルトの体を抱え、悲しそうにほほ笑む女にナルトは困ったように眉を下げる
「ホホホ・・・そうさなぁ・・・だが、そなたが壊れてしまえば、里はなくなるぞ?
ナルト・・・そなたは優しき子じゃ。もう充分に耐えたであろう?苦しかろう?痛かろう?なれば、その苦しみを痛みを与える者どもは我が駆逐してくれようぞ・・・」
「・・・お姉さんは俺に優しいってば・・・でもおんなじくらい優しい人たちがこの里にいるってばよ・・・だから壊したらだめだってば・・・お姉さん・・・俺のことは吾子じゃなくてナルトって呼んでってば・・・」
女の言葉に首を振り、穏やかにほほ笑みながら、ナルトは静かに女の髪を触る
「ナルト・・・我が愛しの吾子よ・・・」
女はその手を好きなようにさせつつ、ナルトの体を地に横たえさせる。
そこでふと気づけば、自分のいる場所が先ほどまでいた里の光景ではなく、ただ白い空間にいたことに気づく。
「そういえば姉ちゃん名前は?」
ナルトは頭だけ女の方を向いて聞いたが、なにやら印を組んでいる女は「九尾じゃ」とどうでもよいことのように応えた。
しかし、地面に頭を付けた時、元いた場所にナルトは女共々戻っていた。


「ナルトッ!!!」
多くの暗部がナルトと女を囲っている。その中にカカシの姿もあり、先ほどナルトを虐げていたはずの大人たちは暗部の後ろで縮こまっていた。
「吾子や・・・」
「・・・」
「吾子や・・・」
「・・・」
「ナルトや・・・」
「なんだってば?」
返事をすると同時に、女はナルトのほうを向き、「つらくないかぇ」と体をいたわり、ナルトの額に手を当てた。
「しばし眠りや」
優しく迫ってきた手に視線を置きながらナルトは女に
「姉ちゃんは今日からヨウコさんだってば。。。」
「よかろう。今は眠りや・・・」



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