ヨウコさん告白される

ヨウコ推薦の油揚げと、牛蒡やニンジンなどを買い、イルカの家へ向かう。
「ヨウコさんは、どうしてナルトのそばにいたいって思うんですか?」
「我には吾子がいてのう・・・もうこの世にはおらなんだが、それは可愛い子であった。金色の毛に大きな耳、青い瞳・・・思い出すのじゃ。吾子を。今度こそ守って見せると我は決心しておるのじゃ。」
つないだ手から伝わるのは、かすかに力を入れて握られたヨウコの決意。
イルカは家のカギを開けつつ、ヨウコを部屋へ誘う。
「あんまり広くないですけど・・・」
そこはカカシ達の家の一室にも満たない小さなワンルーム。きれいに片づけられているところが、イルカらしい。


『ポン』
部屋に入り、イルカがドアを閉めた瞬間にヨウコに尻尾と耳が現れる。とたんに狭くなる室内・・・
「しまっておると窮屈でのう・・・」
言い訳のように口をとがらせているヨウコは、尻尾を3本ほどしまう。
イルカはクスクスと笑いながら、楽にしてください。と、お茶を出す
「むぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・」
出せば楽だがイルカに悪い。だからと言ってしまうのは窮屈ヨウコは悩んだ結果。あと一本だけ尻尾をしまい、5本は出しっぱなしで行くことに決めたらしい。


『トントントントン・・・』
まな板がリズミカルな音も立てて、イルカが立っている台所からはいいにおいが立ち込める。
『ピー』
炊飯器の炊きあがった音と、良い匂い。
「油揚げじゃ!!」
ワンルームの端から四足で近づいて来たヨウコに「まだ煮あがったばっかりだから味しみてませんよ。」と、つまみ食いに権勢を入れて、炊きあがったご飯を混ぜて、お釜を蒸らす。
手早く作られていく料理に感動を覚えつつも「自分は手伝わなくてもいいのだろうか・・・」と思ったヨウコの行動は、イルカの脚にまとわりつくというもの・・
「ヨ・・・ヨウコサン!?なにしてるんですか!?」
びっくりしたのはイルカである。いきなり脚に絡みつくヨウコの行動に疑問いっぱいである。
「?なにってお手伝いじゃ。カカシがいつもナルトの料理中にこうしておる故、何をしとるかと聞いたことがあってのう。料理を待っているときはこうするのがお手伝いなんじゃろう?カカシが言っておったぞ?」
・・・ナルトがナルトならヨウコもヨウコである。なぜにこんなに純粋にカカシを信じてしまうのだろうか・・・。
イルカは頭を押さえつつ、
「今はお手伝い必要ありません。それよりも、油揚げの味見をしてください」
と、ヨウコに立ち上がるようにお願いする。ピョンと勢い付けて立ち上がったヨウコは油揚げをひとつかみして口に運び「うまいうまい」とニコニコ喜んでいる。
油揚げにご飯を詰め込む作業はイルカに教わりつつ、不器用ながらもヨウコも本当にお手伝いをして、いつのまにやらお稲荷さんの完成である。


「「いただきます」」
合掌したその手でお稲荷さんを掴み、口へ
「うまい!!うまいぞイルカ!!我は嬉しいぞ!!」
我慢しきれなくなったらしい9本の尻尾がパタパタと揺れ、大きな耳はピンと立ち上がっている。
「それは良かった」
イルカも遅ればせながら一口食べて「おいしくできてよかった」と胸をなでおろした。
「ヨウコさん。好きな時にお稲荷さん食べ放題で、狭いけど別荘にしてもいいですし、気が向いたら済んだっていいです。」
いきなりまくしたてるイルカにヨウコは頭に???が飛び交っている。
「なんじゃそれは?」
「俺と付き合った時のメリットです」
イルカはまっすぐにヨウコを見る
「俺人間だし、あなたが九尾の狐だってこと知った時は一瞬殺してやるって思ったし、子供さんが居たって言ってたんで、もしかして旦那さんとかいるのかもですけど・・・好きです。」
まっすぐな視線はまっすぐなままヨウコの胸を射る。
「我はどうあがいても獣じゃぞ。この里を襲った妖狐じゃ。」
「わかってます。あなたが話してくれるのなら、なぜ襲ったのか知りたいけど、今は聞きません。」
「我の夫はもういない。吾子ももうおらん。宝はナルトだけじゃ。」
イルカはまっすぐな目線をそのままにヨウコに近寄る。お稲荷さんの乗った小さなちゃぶ台さえも邪魔だというように、ゆっくりとヨウコのそばによる
「あなたさえ良ければ、」
「そなたさえ良ければ、」
「「あなた(そなた)を俺に(我に)ください」


この日から、木の葉に一つのカップルが誕生しましたとさ・・・


                   FIN
おまけ
いろいろあって、ほっぽっていたお稲荷さんをまた食べだす二人・・・
「イルカ。米が頬についておるぞ」『ぺロッ』
「な・・・なにしてんですか!?」
「ん?カカシはナルトの頬についた米をこうやってとっておるぞ?人間のカップルとはそういうものではないのか?」
・・・カカシさん!!あんたは家でナニやってるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
心の中で叫びつつ、密かにヨウコの認識を矯正しようと心に誓うイルカであった・・・

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