ヨウコさんイルカに出会う1

「グハッ」
周りにはおびただしい死体と、立ち込める死臭。カカシは最後の一人の首をはねて、積み上げた死体を火遁で燃やす。いつもは青い炎が出るのであるが、今日のカカシが吐いたのは赤い炎・・・真っ赤な真っ赤な炎・・・
一緒に任務をこなした暗部の面々は小さな疑問を感じたが、カカシの行動に疑問を持つことはない。車輪眼を出すこともなく大量の殺戮をこなしたその動きはカカシ以外に出来るものではないからである。
「みんなふせろ!」
カカシは叫ぶ。断末魔の絶叫と共にカカシは炎の中からクナイを投げてきた忍にとどめを刺す。
「チッ・・・生きていたのか・・・」
カカシの腕にはクナイがかすった後。暗部の面々が近付けば「誰じゃ。殺しそこねたのは!!」とか小さなささやきが聞こえて、なんだか近寄りがたい・・・
固まっていた面々に火遁によって灰になった死体を確認するように目線で指示する。
作業が終われば
「今日はもう解散。」
突然に告げて、瞬身できえていく。




そんなこんなでここは木の葉の受付・・・
九尾の狐のヨウコさんは今日も今日とてカカシの代わりに任務に就く。
大好きな油揚げと、退屈な日常を緩和するため。
いつまでもナルトと一緒にいることはナルトの教育上よろしくはないし、カカシに任せておけば悪い方向にもいかないことは分かっている。故にヨウコは自分が任務に出てカカシをナルトの近くに置くことを選んだ。というか、今ではカカシに上手に操られている気がしているヨウコさん・・・


「カカシさん」
受付でほほ笑む鼻に傷のある男。
「イルカ先生」
カカシに化けているヨウコはにこやかにほほ笑む。
「最近ナルトはどうですか?ご迷惑をおかけしていませんか?」
ヨウコはこの男をよく知っている。ナルトの中にいたころ、周りの大人が冷淡な視線を向ける中で、正面切ってナルトにぶつかってきた優しい男・・・
そして、その雰囲気が優しくて誰もがほほ笑まれれば頬笑みを返してしまう・・・そんな男。
「カカシさん怪我でもしたんですか?」
イルカはヨウコ扮するカカシに鼻を近づけて「血の匂いが・・・」などと言ってクンクン・・・
「あぁ・・・クナイでちょっと切られまして・・・」
と、腕を見せるが九尾であるはずの自分の腕に傷が残っていることに違和感を覚える・・・「毒か・・・」
「うわぁ!!結構深いじゃないですか!!手当しますから医務室に行きましょう!!」
頬笑みは優しいのにこういうときのイルカが強引でまったく人の話しを聞かない奴だってことをヨウコは知った・・・
『キュン』
ヨウコは自分の腕を引っ張るイルカの後ろ姿になぜかときめきを覚えた。



医務室
「ぬわぁぁぁぁぁ・・・」
ヨウコ扮するカカシは絶叫を上げていた・・・
生れてはじめての消毒液。回復力に自信のある自分には必要ないが、如何せん今はカカシであるため、ヨウコは仕方なく手当を受け入れていたが、人間の手当てがこんなにもいたいだなんてまったく知らなかった。ナルトが自分に消毒液を塗っていたときに泣いていたのは悔しいからだけだと感じていたが、きっと痛みによる生理的な涙も含まれていたのであろう・・・
「か・・・カカシさん?」
いままで絶叫など上げたことのないカカシが大絶叫した状況に驚いたイルカはポカンとカカシを見ている。
「あははは・・・すいません。考え事してるときにいきなりだったもんで、びっくりしちゃって・・・」
「確かに。こんな傷にいきなり消毒液は新手の拷問ですね・・・すいません。次は声かけますね?」
・・・つぎがあるのか・・・ヨウコはもはや涙目で「逃げたい・・・」と心で思いつつ、イルカに掴まれている腕がちょっと動けば強く掴まれることはわかりきっているので逃げられないことも承知済みである。
「カカシさん・・・今度は傷口の深い所なんで、さっきより痛いかも・・・」
『ポン!!』
さっきより痛いと聞いた瞬間がヨウコの我慢の限界だったらしい。
小気味良い音と共にカカシは姿を消し、現れたのは大きな9本の尻尾とこれまた大きな狐耳をつけた和服美人・・・
「九尾の狐?」
イルカはクナイを握りしめ、距離をとる。掴まれていた腕が離れることに少しのさみしさを覚えながら、ヨウコは思念をカカシに飛ばす「バレた」と。
睨むような、それでいて何かを探るような視線に悲しげに頬笑みを返しながら
「今本物のカカシがくるでの?そのクナイをしまっておくれ。我は何もせぬ。」
と、ゆっくりと座っていた長椅子から降りて、床に座った


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