カカシさんと忍3

「カカシ!!ナルトが!!」
火影邸からどんなに急いでも家まではかなりかかる。
もどかしいほどの道のりの中、カカシは祈り続けた。無事で、どうか早とちりで済んで欲しいと・・・面倒な始末書も、ペナルティのきつい任務も、ナルトが無事なら、何でも喜んでこなす。だからどうか、無事で・・・
カカシは火影からの招集であったがために忍犬のすべてを連れて出てしまっていた。
そのことをこんなにも後悔するとは思わなかった。
なぜ巻物を持ってきたときの小さな疑問を自己完結してしまったのか、なぜこんなにも簡単に罠にハマってしまったのか・・・
思考の中でも決して脚を止めずに走ってきた。
そんなカカシの眼前には、祈りが通じていなかったことを知らせる、大量の血を吐いたのであろうナルトの姿と、それを抱き起こすヨウコの蒼白の顔。


「カカシ!!まだ息があるぞ!!」
ヨウコは治癒のチャクラをナルトに送る。カカシがヨウコ以上に蒼白な顔をナルトに寄せ、毒を判別すべく症状を注意深く観察する。
「これは・・・神経毒だ・・・木の葉の暗部が使ってる・・・解毒薬を早く!!」
「くそ!!我は外傷は簡単に直せるが・・・毒が全身に回っているようじゃ・・・吸い出すのは無理じゃ・・・」
ヨウコは着物がナルトの血に染まっていくことをいとわずに懸命に治療する。
イルカはすぐに医療班を呼びに走った。
遅れて着いた暗部は、状況を火影に伝えるべく一人は消え、残りは犯人の手掛かりを探す・・・
「カカシさん!!」
カカシが呼ばれて振り返ると、暗部の一人が、カカシが昼間にナルトにあてて書いた手紙、床に転がったカップ麺、それに覚えのないおにぎり・・・
何者かがナルトに向けた殺意の断片。さもカカシからのおにぎりを装ったモノ・・・
「ナルト・・・お前いっつも食事の時は注意深かったじゃん。俺が作ったご飯もいっつも毒見みたいなことしてたじゃん。なんで・・・なんで食べたんだよ・・・。」
カカシは泣きながらナルトの顔をのぞく。今息をしているのか心配になるくらいの顔色。それでも、ヨウコの治療は確実に効いているらしく、唇は少しばかり赤味がさしてきた。


「あの手紙と、握り飯では、ナルトはそなたを疑っているであろうな・・・だから口にしたのじゃろう・・・。ナルトはそなたに殺されるのを受け入れたんじゃろう。
我とナルトはつながっておる。ナルトの命の危機には、我に心が伝わってくるが、ナルトの心は終始おだやかであった。ナルトはそなたが自分を憎んでおると思って、生をあきらめてしまったのかもしれん・・・」
額の汗と、いつもなら乱すことのない髪を振り乱しているヨウコにナルトがどれだけ危ない状況にあるかを思い出させ、カカシはポシェットからハンカチを取り出してヨウコの額を拭う。
テーブルの状況を見たときに薄々気づいていた。
自分の愛情はナルトに届いていなかったのであろうか?
愛されることに不慣れな小さな恋人は、自分の愛以上に裏切られる恐怖と常に戦っていたのかもしれない。
思い悩むカカシの背中をポンポンと叩き、
「そなたが思う以上に、ナルトの傷は深いのじゃ。心はまだ凍てついておるが、日ごと豊かになっておる。大丈夫じゃ。」
ヨウコはナルトをカカシに預け、「医療班が来るまでの辛抱じゃ。」と、自分に言い聞かせるようにナルトにチャクラを送り続ける。


「ヨウコさん!!!」
医療班の先頭を走ってきたイルカに受け止められ、ヨウコは倒れ、
「峠は越えた。我がそそいだチャクラがあれば、死ぬことはないだろう・・・我はしばらく静養する。思念体の状態ではこれが限度じゃ。ナルトの中に還る。2〜3日で戻るでの。」
イルカが小さく「いってらっしゃい」というと、それに応えるようにニコリと頬笑み、ヨウコは消えた。



ナルトは医療班に抱えられ、病院に搬送された。
「カカシさん。」
医療班の一人に声をかけられ、カカシは立ち上がり、小さく会釈する。
「なんでしょう?」
医療班の忍は言いにくいことを言うというあからさまな態度で、カカシに耳打ちをする。
「ナルト君の体にはおそらく、そこらへんの上忍より毒の耐性があります。今回の毒も過去に受けたことがあるようで、なんとか持ちこたえてくれましたが、この毒、おそらく、ナルト君に毒入りの飴を渡して里を追放された『レン』という上忍が暗殺に好んで使っていた毒だと思います。過去に『レン』と組んでいたことがありまして・・・」
医療班の忍は「彼は今抜け忍になったという噂も聞き及んだことがあります・・・」と付け加えて、去っていく。


カカシはパックンに≪『レン』という木の葉の元上忍を調べるように≫という書簡を持って火影のもとに行くよう指示をだし、自身はナルトの処置室へ向かった。
ただ生きていてほしい。切なる願いを胸に、カカシはナルトのもとへと急ぐのであった。


ナルト・・・お前を愛せるなら、俺はなんだっていい。
ナルト・・・お前が笑うなら、俺はなんだっていい。
ナルト・・・お前が楽しいなら、俺はなんだっていい。
だってさぁ、俺はお前を愛しちゃってるからさ。
どうかどうか、俺と生きてよ。



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