B short | ナノ





畜生。
そっちばっかに気とられてないで、俺を見ろよ。

……イライラする。




「にゃー」
「可愛いっ!」


……そいつのどこが良いんだよ。
そんなモン抱き締めてねぇで、俺を抱き締めろよ。


「政宗、可愛いね」
「Ahー……そうだな」


にゃーにゃー鳴いてるだけじゃねぇか。
それに、猫の分際でなまえを舐めやがて。
舐めるの許されてんのは俺だけなんだよ。




「なんか、怒ってる?」
「別に。ただそいつ、オスだぞ」
「それがどうしたの?」


胸に顔を埋めて喜んでんじゃねぇか。
そこの柔らかさを知るのは俺だけで良いんだよ。


「怒ってるよね?」
「怒ってねぇよ」
「怒ってる」
「うっせぇな、怒ってねぇって」
「怒ってるじゃん!!」
「怒ってねぇ!!」


なまえがキレて、ついつい俺も怒鳴ってしまった。
くそ、なに猫如きで取り乱してんだ、俺は。


「なにが気に食わないの!」
「だからなんでもねぇって言ってんだろ!」
「じゃあなんで怒鳴ってんのよ!」
「お前がキレるだからだろうが!!」
「私は怒ってない!!」
「怒ってんじゃねーか!」


あーくそ、俺なんか放っておいて猫とじゃれてれば良いだろうが。
むかつく。

イライラしながらタバコに手を伸ばす。


「怒ってる理由教えてよ」
「うるせぇ。お前は猫と遊んでろ」


そう良い捨ててタバコに火をつけると、隣から笑い声が聞こえてきた。

「あは、もしかしてやきもち妬いてる?」
「……妬いてねぇ」
「そっか、じゃあ猫ちゃんちゅーしよっか?」


んーなんて唇を尖らせながら猫の口に寄せていくなまえ。
あと一センチのところで、猫となまえの間に手を差し入れた。


「妬いてないんじゃないの?」
「……猫に病気移されるかもしれねぇだろうが」
「ふーん?」


にやにやと厭な笑いを見せてくる。
なんだよ、その目は。その顔は。

面白そうに見やがって。


「Shit!! そうだよ、妬いてんだよ! 悪いか!」
「あは、心配しなくても一番好きなのは政宗だにゃー」


手を猫のように曲げながらそう言ったなまえ。


こいつはまた……あーくそ!
まだ長いタバコを灰皿に押し付けて、なまえの膝の上に座っている猫を放った。


「な、何すんの!?」
「No probem.猫は着地が上手くできるようになってる」
「そ、そういう問題じゃ……」
「やべぇ、今のはキた」
「ちょ、なにっ!?」
「猫語っつーのか? 萌える」
「うそ、まっ……! きゃーっ!」









「――……っつー話なんだよ」
「たかがそれだけの話で電話してきたのか」
「Of course.ヤベェだろ?」

「今何時だと思ってんだ」
「夜中の三時」
「ふざけんな、明日仕事なんだよ。惚気で人の睡眠妨げんな」
「Ah? おい、元親? おい!」


切りやがった。
くそ、話はこれからだってのによ。

ま、次は佐助にcallするか。
ぐったりと寝てるなまえの頭を一撫でして、佐助の電話番号を開いた。



とあるバカップルの一コマ
(今度は猫耳と首輪つけてヤってみるか)
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