「はいはい。どーでも良いからこの問題解いて」 「うぅ……分からないです」 「さっきも同じような問題間違えてたじゃん」 「……憶えてません」 「これ、中二の問題なんだけど」 すいませんね、中二の問題が解けなくて。 だって、中一のときから危うかったのに、中二になったら分からないのも当たり前じゃん。 「えっと、もう一回説明するよ?」 「……お願いします」 「このA君は家を十時に出て、はじめは分速百八十メートルで……」 あーやば、なんにも分からない。 なんでこんな問題解かなきゃいけないの。 やってられないよ。 なんて思いながら一生懸命説明してくれてる佐助先輩を見る。 うわー格好良い。 まつげ長いよね。 「なまえ、聞いてる?」 「全然」 そう言えば溜息が聞こえてきた。 あらら、呆れられちゃった。 「俺様と同じ高校に来るんじゃないの?」 「行きます」 「俺様の高校って偏差値高いって何回言ったら分かるの?」 「だって、わかんないですもん」 「だからこうやって教えてんでしょーが」 私がその場に寝転べばシャーペンでぺちっとおでこを叩かれた。 「中一からやりなおしたいー」 「もう遅いでしょ。さっさとやる!」 「うー先輩厳しいって」 「俺様、基本スパルタだから」 くすりと笑って先輩は机に向かった。 その笑顔につられて私も起き上がりシャーペンを手に取った。 「どれをXにするかわかる?」 「えっと……」 なんて感じで参考書の内容を進めていった。 あーよく分かんないけどやらなきゃ。 先輩がせっかく教えてくれてるんだし。 なんて思って一生懸命解こうとしても頭の隅ではどうやって勉強しなくて済むだろうなんて考えてる。 あーあ、先輩と一緒の高校に行くって決めてるのになぁ。 …………あ。 いいこと考えた。 「せんぱぁい」 「そんな猫撫で声出しても勉強はやめないよ」 「勉強は勉強でも違う勉強がしたいなぁ」 「なに?国語?」 「ちがいますよ、保健です。ほ・け・ん」 「は?」 これで先輩がノッてくれたら、時間稼ぎできるし、いちゃいちゃもできる。 これこそ一石二鳥ってやつじゃない? どうせ先輩も本気で教えるわけないし。 ただ雑談みたい過ごして、楽しかったねーで終わるはず。 うん、我ながらナイスアイディア。 「次はちゃんとするから、ね?」 無い色気を必死で出して先輩を誘惑する。 ノッてくれるかな。 「絶対?」 わ、ノッてくれた。 「うん。絶対!」 「はぁ。しょうがないなぁ」 なんて先輩は溜息をついて私を抱きかかえた。 「へっ!? なにする……?」 「なにって、ナニじゃないの?」 「あ、いや……私はただいちゃいちゃするだけだと……」 「保健の勉強でしょ? なにをいちゃいちゃとか言ってんの」 ベッドに押し倒されながらそんな事を言われた。 あ、やば。 どうせ保健でも、ただ抱き合ったりするようなことだと思っていた。 先輩も受験が終わるまで手を出さないなんて言ってたし。 こんなにも簡単に前言撤回されるもんなの? 自分で誘っといてなんだけど、かなり焦ってる。 まさか本気だとは……。 「あ、やっぱり、飲酒と喫煙について詳しく……」 「内容は俺様が決めるから」 「あ、いや……その」 「そうだ。一応言っておくけど」 「な、なんですか?」 そう聞けば、先輩はにっこりと笑った。 「俺様、基本スパルタだから」 「なっ!?」 「じゃぁ、授業を開始します」 「ちょっ、どこ触って……!」 やばい。 もう逃げられない。 慣れないことはするな (さよなら女の子の私。こんにちはオンナの私) [戻る] ×
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