「あ、ああああのっ!」 「なんですか?幸村さま」 慌てて噛みまくる俺になまえ殿は優しく微笑んで手ぬぐいを手渡ししくれる。 美しいっ……! なまえ殿の周りだけまるで華が飛んでいるようだ。 「か、甘味をっ……!」 「ええ、用意しておりますよ」 「おぉっ!」 「しばしお待ち下さいね」 そうまた微笑んで俺の座る場所に座布団を敷いて、なまえ殿は厨へと歩を進めた。 今日、佐助は任務で居らぬはず。 もしや、今日の甘味はなまえ殿の手作りでは……!? そう考えただけで、頬が自然に上がってしまう。 「……はっ!」 なんだ、この体たらくは……! こんな様子ではお館様にしかられてしまう! きっ、と顔を引き締めても、俺のためになまえ殿が甘味を手作りしてくれたと考えるとやはり、頬が緩んで上がってしまう。 緩んだり、はっと気付いて引き締めたりを何度か繰り返し行っているとくすりと笑い声が聞こえてきた。 「なっ……!? なまえ殿!?」 「申し訳ありません。驚かせるつもりは……」 少し眉を下げて謝りながらも、俺の百面相が面白いのかくすりとまた微笑んだ。 「あ、う……」 まただ、この胸の奥が掴まれたような感じ。 この頃、この現象が頻繁に起こる。 佐助はおめでとうと言っておったが意味が分からぬ。 「幸村さま、今日はみたらし団子ですよ」 「お、おぉ! では早速!」 なまえが盆を俺の隣に置いたと同時にみたらし団子を手にとる。 こ、これが、なまえ殿が作った団子……。 宝物として取っておきたいところだが、やはり食欲には勝てぬ。 一口に含んだと同時に広がる甘み。 丁度良い団子の柔らかさ。 これぞ、いつも食べている団子。 幸せな瞬間を堪能していると、一つ疑問が浮かんだ。 ……いつも食べている団子? いつもの団子は佐助が作っているはず……。 なぜ、なまえ殿の手作り団子にいつもの味、食感がするのだ? ……もしや、いつも俺の団子を作っているのはなまえ殿!? なんと! そうと早く分かっておれば、もっと味わって食べたというのに……! 「幸村さま?」 「む!? なんでござろう!?」 「いえ……大好物の団子を食べておられるのに、悔しそうな顔をしておられたので」 「い、いや! 少し疑問に思うことが……」 「疑問、ですか?」 首をこてんと倒したなまえ殿を見るとまた胸が締め付けられた。 どうしたのだ……。 顔が熱い。 そんな違和感を振り払うように俺はなまえ殿から視線を外した。 「幸村さま、どうなされましたか?」 「……身体がおかしいのでござる」 「身体が? 病ですか!?」 「いや、佐助に言えば心配ないと言っていた故、大丈夫でござる」 「そうですか。良かった……」 胸に手をあて、安堵するなまえ殿を見るとまたあの感覚に襲われる。 俺を案じてくれていると思えば、先程よりも強く締め付けられた。 「ぐっ……!」 「幸村さま! 胸が痛みますか!?」 胸を押さえてうずくまると、なまえ殿が俺の肩に手を添えてくれた。 胸が苦しくて、なまえ殿も心配してくださるというのに……。 身体に触れるなまえ殿の手を感じて、嬉しいと思ってしまった。 気付かぬ想い (触れる手を引っ張り抱き締めたいと一瞬思った俺は……破廉恥だ) [戻る] ×
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