mine | ナノ






「なーなまえ」
「なに、慶次」
「今日は伊達と食わねえの?」
「宿題忘れたからしかたないじゃん。これやらなきゃ唯でさえでもやばい英語が余計にやばくなるし」




この前の中間は本気でやばかった。
このままだったら、まじで政宗君と同じ学年になっちゃうかも。って心配するくらい。


特に、英語が壊滅的だった。



ほんとのぎりぎりで欠点は免れたけど、このままじゃ志望大学いけない。
だから、ほんの少しでも成績を落とさないようにしなきゃ、ということで今日は政宗君との昼食は断った。

政宗と一緒に食べたら予鈴鳴るまで帰してもらえないし。

英語は五限だから、昼休みのうちにやっておかないといけないし。



電話ですっごい謝ったけど、政宗の声は低かった。
まあ、明日も一緒に食べようね、って機能約束してたしね。

いきなり三限と四限の間の休み時間にドタキャンされたら怒るよね。



……悪いことしちゃったなあ。


放課後でもちゃんと謝ろう。




「つーかさ」
「なに? まだあんの?」
「英語だったら伊達に訊いたほうが早いんじゃねえの?」
「朝練して勉強してまた放課後練する政宗の唯一休める時間を取りたくない」



私だって始めは政宗に昼休み訊こうって思ったよ。

政宗は品詞とか単語ほとんど知ってるし。
和訳だって余裕で出来ちゃうような天才だし。


けど、政宗は疲れてるのに私のことでまた疲れてほしくない。


それに、年上の私が年下の政宗に勉強教えてもらうって、私の蟻くらいの大きさの自尊心が傷つくし。
……しょうもない、理由だな。

自分でも器の小さい奴だと思うよ。




「ははっ、よっぽど伊達のことが好きなんだな!」
「はあ!? ち、違うし!」
「いやいや、伊達の身体を労るところとかもう嫁じゃねえか!」
「な、なに馬鹿でかい声で言ってんの! そんなのじゃないって!」
「顔赤いぞー」
「赤くないって!」



ああ、むかつく!

むかつくから、怒鳴っても今の慶次には無駄みたい。
……照れ隠しに怒ってると思ってるんだろうな。

くっそ、そんなつもりで言ったわけじゃないのに。


けど政宗の嫁って響き、嫌いじゃないかも……。


うわー自分馬鹿だ。
勉強しなきゃいけないのに頭の中は政宗君との将来ばっかだ。


……だめだめ、勉強しなきゃ。



慶次を無視して勉強しようと、机に視線を戻した。



「いひゃい……」


シャーペンに手を伸ばしたところで慶次に頬を摘まれた。



「やっぱり、恋する乙女は可愛いねえ」
「……ひゃあ?」
「頬赤くしちゃってさー。俺も恋がしたいよ!」
「はりゃせー!」
「あははは、なまえの頬っぺた柔らかくて癖になるなー」
「うっしゃい」



それは私の頬っぺたにたっぷり脂肪がついてるってことなんだよね?
……悪かったなあー、痩せるよ馬鹿。


なんて思いながら、私も慶次の頬っぺたを引っ張った。



「いへっ」
「ひゃひゃひゃ!」


変な顔ーなんて呂律の回ってない口で言えば慶次も同じようにお前もな、と言ってきたと思う。

あーあ、慶次はまだ顔が整ってるからまだましなんだろうな。
私の今の顔は絶対政宗に見せられない。


整ってる顔の慶次に腹が立って、強く慶次の頬っぺたを引っ張った。




「いひゃい、いひゃい! ……いってえっ!」
「いったっ……!」



お互いにあまり痛くないように引っ張ってたのに、いきなり誰かに引っ張られて私たちは離れた。

所謂、洗濯ばさみを引っ張って取ったような芸人にはおいしい状況のようになった。
頬っぺたを摩りながら私を引っ張った張本人がいる後ろを振り向いた。




「……ま、まさむね……」
「随分と楽しんでるようだな、Ah?」


お、怒ってるよね、この雰囲気。
なんか青筋が浮いてるような気もするし。




「おいコラ、次こいつに触れたら殺す」
「こわいねえー」


反抗なんて出来ないような雰囲気を漂わせながら言った政宗に対して慶次は苦笑いしてる。
そりゃ、そうだよね。
いきなりそんなこと言われたら誰でも苦笑いするよ。



「来い」



腕を引っ張られて、躓きながらも立ち上がって政宗について行く。

怒られるのかな。
慶次と頬っぺた引っ張り合ってたのそんなに癇に障ったのかな。

ああ、どうしよう。
なんて謝ろう。
昼食ドタキャンした事もあるのに。


なんて考えながら政宗の背中を見つめていると、北階段に着いた。




「あ、あの……政宗?」
「勉強するんじゃなかったのかよ」
「い、いや、してたんだけど慶次が話しかけてきて……」
「少しでもなまえの宿題を手伝えればと来たら、あいつと触れ合ってるしよ……」



だんだん声が小さくなってきて、政宗が抱きついて来た。
……政宗、不安がってる。

私、最悪だ。





「俺に、うそついて、う、わき……してんのかと思って……」
「……うん」



「見た瞬間、心臓、とまるか、と思ったじゃ、ねえか……」
「ごめん、ね。不安にして」
「っ……別に」
「私は政宗だけだから」



政宗の背中を撫でて落ち着かせるようにした。



この前の婚約者事件から、政宗は少しずつ弱いところを私にだけ見せてくれるようになった。
政宗はプライド高いから私にこんなところを見せてくれるようになったのは正直嬉しい。




「私は政宗から離れないから」
「……ああ」
「ってか、政宗だけしか見えてないから」


くっさい台詞だとは思うけど、仕方ない。
政宗のためならどんなくさい台詞でも、本当のことだからちゃんと言える。


政宗の背中を変わらず撫でていると、私の身体が締め付けられた。



「政宗?」


「……まあ、」
「ん?」
「なまえが俺から離れようが、無理矢理でも取り返すけどな」
「は?」


何をいきなり言い出すの。

……ってか、声色が戻った。
機嫌戻ったんだ。




「例えなまえが俺を嫌おうが、絶対に取り返す」
「……私が全力で嫌がったら?」


自信満々に言う政宗を少しからかいたくてそう意地悪言った。




「その時は鎖で手足を繋いで俺の部屋に監禁だ」


腰に響くような声で囁かれた。

相変わらずいい声すぎ。
腰砕けるっつーの。




「怖いなあ。嫌でも離れられないじゃん」
「That's right」



笑いながら政宗に今よりも強く抱きついた。



I RECOVER YOU
(私が政宗から離れるなんて天地がひっくり返ってもありえないけどね)
――――――――

このシリーズは後日談のリクエストがかなり多かったです。
なので創ってみました。


なんか、この政宗は弱々しいですね(笑)
そして、全然英語を話さないですし。

久しぶりに書いたのでなんか変になってしまいました。
ではでは、またリクエストがあれば創ろうと思います。
文の形とか口調とかが変化してても温かく見守ってくださいね(笑)


<らいおん>
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