mine | ナノ





「ま、政宗君……! お願いだからやめよ!」
「Ah? んでだよ。遊園地に来たらここは醍醐味だろ?」
「違うよ! 醍醐味は観覧車とか、ジェットコースターだから!」


お化け屋敷に引っ張っていこうとする俺をなまえは必死で止める。
たかがお化け屋敷を何でそんなに怖がってんだ。



「おら、行くぞ」
「嫌だ嫌だ!」
「何で、そんなに怖がってんだ?」
「わ、私、小さい時にお化け屋敷で迷子になったことあるんだって!」


あの時は、お化けに案内されて死んじゃうかと思ったんだから! と、もう半泣き状態で訴えるなまえに思わず口角が上がった。

……お化け屋敷が怖いなまえは屋敷の中で俺に頼るしかねえよな。
つーことは、俺に抱きついてくんのか。



「Don't worry.俺はお前を置いて行かねえ」
「そ、そういう問題じゃなくて!」
「Let's go!!」


必死で踏ん張ってるなまえを思いっきり引っ張って俺達はお化け屋敷に入った。
後ろで、いやぁああ!! と叫んでるなまえは無視した。








暗闇の中、なまえの腰が引けてて、笑ってしまった。




「ま、政宗君の馬鹿!! 笑わないでよ!」
「Ah? そんなこと言うなら置いて行くぞ」


なまえの手を振り払って先に行こうとすればなまえは俺の腕に抱き付いて来た。


「待って待って! ごめん! 置いてかないで!」

震える声で必死で止めた。
ああ、やべ……可愛い。

つーか、胸が腕に当たってる。


上がる口角を手で隠し、なまえを見ると本気で怯えてる。
マジで怖えんだな。


なんて思って居ると、前に人の気配がした。


「あ」


気づいた時にはもう遅く、血だらけの白い着物を着た女が俺達の前で掠れた声を上げた。



「う"らめじぃやあ"あ"ああ!」
「ぎゃあああ!! 政宗君、政宗君っ!!」
「落ち着け、人間だ」
「いやあああ! お化け!!」
「……話聞けって」


お化け役の女を通り過ぎるために抱き付いて来たなまえを剥がして引っ張った。
足震える程怖いのか。

とりあえず、落ち着かせねぇと。


「あのな、なまえ。ここには……」
「ままま前、前まえ!!」
「Ahn?」


前に目とやると、坊主がよろよろと千鳥足で歩いて、だずげて……とこっちに歩いてきた。

「政宗くん! どうしよう! 呪い殺される!」


逃げなきゃと、俺を引っ張って後ろに走ろうとするなまえ。
後ろに逃げても、さっきの女がいるのにな。

それに、後退なんかしたらいつまでもここから出られねぇだろ。


「Don't woorry.……ってなまえ!?」
「やああああ!」


今度こそ落ち着かせようと、一旦なまえの手を離した。
すると、いきなりなまえが首に腕を回して抱き付いてきた。


……飛びついてきたな、今。



あまりにもいきなりの事で油断してた俺は、思わず尻餅をついた。


「って……」
「いやいやいや! 政宗君、もう二度と離さないで!!」


Wait,wait,wait.
今の体勢……正面ざ……げほ、げほ。

それに、二度と離さないで……だと?
なんだ、その殺し文句。


「なまえ、落ち着けっ、人前だ……!」
「いやいや! 離れない!」


余計俺を抱き締めた。
やべぇな、おい。
押し倒してえ。

胸板辺りに感じる柔らかい双丘を堪能していると草履を引き摺った音が聞こえた。

……そういえば、坊主の前だったな。

顔を上げて坊主の顔を見れば、気まずそうに目を逸らして踵を返した。
空気読んだな、あいつ。

いい心がけだ。と思いながら坊主が定位置に帰って行くまで見届けた。



「ま、ま政宗君!」
「どうした?」
「あああの、お坊さんはっ!?」

慌てふためいて言うなまえについ悪戯心が沸いた。


「Ahー……なまえの後ろに居る」
「いやあああっ!!」


ああ、柔らけえ……。
なまえの首筋に顔を埋めて、匂いを吸い込んだ。


「ど、どっかやってよ!!」
「……なら、膝立ちになって俺に抱きついた方が良いな」
「わ、分かったっ!!」


混乱してて何も分かってないなまえは、俺の言う通りに膝立ちになって抱き付いて来た。
だから、丁度俺の顔はなまえの胸の高さにある。

その高さの関係で抱き付かれてみろ。
……男の浪漫じゃねぇか。


思う存分に『それ』へと顔を埋めていると、草履の引き摺る音が聞こえてきた。
この足音は、さっきの坊主か?


「あ、あの……後ろが詰まっているので……お先に進んでいただきたいのですが……」

申し訳なさそうに声をかけてきた。


「え?」
「おい、振り向くな」


坊主の方に振り向こうとしたなまえの頭を押さえて俺の方に向けたまま、俺は立ち上がった。

こいつにまたこの坊主を見せたら振り出しに戻るだろうしな。


「取り合えず先に進むぞ」


eye contactを坊主に送って、後ろに下がらせ、なまえから見えないようにした。


「ま、政宗君、もう出ないかな!?」
「I don't know.だが、俺が護ってやるよ」
「ほ、ほんとに!?」
「Of course」


不安そうに俺を見上げるなまえは可愛いと思う。が、また手を繋ぐだけに戻ってんのが気にくわねえな。



「あ、あそこになんか居るんじゃねぇか……?」
「へ!? いやいや!!」


怯えたなまえが俺の腕に抱き付いて来た。

……本当は何も居ねぇけどな。



I SCARE YOU
(『それ』が腕に当たる感触が溜まんねぇんだよな)
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