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「けほっ、けほっ……」
「Are you OK?」
「んー喉痛い……」


なんで風邪引いちゃったんだろ。
馬鹿は風邪引かないっていうから、油断してたかも。



「何で休まなかったんだよ。悪化したらどうすんだ」


咳き込む私の背中をさすりながら政宗君は呆れたように言う。

政宗君に会いたかったから。なんて言ったらどういう反応するんだろうな。
照れてくれる?
それとも笑ってキスしてくれる?


なんて思いながら、政宗君の顔を見つめると、何も分からない政宗君は、保健室行くか? と心配してくれた。



「……行かない」
「素直に保健室行くか家に帰るかしねえと、辛いのはなまえじゃねぇか」
「いやだ」


保健室に行ったら、あと十五分残ってる休み時間を政宗君と過ごせなくなるし。
家に帰ったら、誰も居ないいから寂しい。

風邪引いたときは人が恋しくなるんだね。

しばらく風邪なんか引かなかったから忘れてたよ。




「嫌だって言われてもな……」
「政宗君が一緒に寝てくれるなら家にでも保健室にでも行くよ」


咳をしながら政宗君に言えば、背中をさすってた手が止まった。


「……何言ってんだよ」
「だって、一緒に居たい」

一人はちょっと嫌だ。
どうせ、保健室の先生だって構ってくれるのは最初だけだし。

ってか、保健室の先生とあんまり仲良くないから、一緒にいると逆に緊張して休めない。




「あのな、只でさえでもこっちはヤバイ状態なんだ」
「へ?」
「なのに一緒に寝たいとか居たいとか言うな馬鹿」


手をおでこに添えて、溜息を溢した政宗君。
ヤバイって何が?
もしかして、体調?


「あ……」
「んだよ」

そういえば、政宗君顔赤くない?
え? もしかしてもう私の風邪がうつったとか?

ちょ、政宗君にうつらないよう、マスクしてきたのに。



「大丈夫? ダルい?」

政宗君のおでこに自分のおでこを合わせると、少し熱かった。


「政宗君、熱あるんじゃない?」
「熱あるのはお前だ。とりあえず、顔を近づけるな」
「え……そんなに私の顔見たくない?」
「Shit.ちげーよ」



舌打ちして、政宗君は私を離した。
私の顔が近付くの嫌がってんじゃん。


まあ、確かに私の顔は見たいと思うような顔じゃないと思うけど……。
彼女に対してそんな態度はないんじゃない?


「心配したのに……」


政宗君に背を向けて、膝に顔を埋めた。


「Ahーそういう訳じゃねぇんだ」
「じゃあ、どういう訳?」
「知りたいか?」
「うん」


そう言うと、政宗君が私の肩を掴んで強制的に向かい合わせにさせた。
突然のことに、反応できなくてされるがままになっていると、マスクを下げられた。


「まさむ……んっ……」

何で、キスされてるの……?
ただ、唇を合わせただけの軽いキスが終わると、政宗君が怒っているような、呆れてるような顔をした。


「……惚れてる女が赤い顔と寂しそうな目で一緒に寝たいとか居たいとか言ってみろ。押し倒したくなんだろ」
「……え?」
「それだけで理性を総動員させて耐えてんのに、普通、顔を近づけるか?」
「えっと……なんか、ごめん」
「もう遅い」
「え、ちょっ……んんっ!」


あ、どうしよう。
この子もしかして、盛っちゃってる?



「……っ、ぷはっ……待って、風邪うつる」
「なまえの風邪だったらwelcomeだ」
「こ、ここ学校っ……」
「もし先公に見つかったら、一緒に怒られようぜ」


そう言うと、私の髪を撫でるように触り、微笑んだ。
ああ、そんなに格好いい顔で言われたら断れないじゃん。


「……見つかったら、政宗君が悪いって言うからね」
「No.悪いのはお前だ」
「な、なんで私が……」


「お前は俺を誘惑した。それが一番悪い」




……なんでそーなるの。



唇に感じる心地よい熱に、目を閉じた。



I TEMPT YOU
(誘惑した憶えはないんだけどな……)
[ 12/24 ]
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