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28 弱点発見

「なまえちゃん起きて。仕事だよ」
「ん、ん……? いま、何時……」




身体を揺すられる感覚にうっすらと目を開けるともう光が差していて朝だということが分かった。
佐助さんの幸せそうな笑顔に朝日が差してすごく格好いい。



普段だったら赤くなってるんだろうけど、今は眠い。



「六時だよ」
「じゃあ、まだ寝る」
「だめだめ、シャワー浴びなきゃなんないでしょ」
「えー……な、んで」



眠いし何よりだるい。
別に仕事行くのにシャワーなんて浴びなくてもいいし。




「あれ、まだ寝ぼけてる? それとも忘れちゃった?」




あんなにあっつい夜を過ごしたのに? と抱きしめられて昨晩の記憶がフラッシュバックする。



彷徨っていた意識が覚醒した。




「っ!」



そ、そうだ、昼間に自分から誘って、夜になってそのままやらかしたんだった……。


お風呂入らないとだめに決まってる!
いろいろと私の身体は大変なことになってる!





「忘れちゃった?」
「おっ、覚えてます! だから、はなっ……ひ!」




離して、と言おうとすれば太ももを撫でられた。
佐助さんの唇は私の首に押し当てられた。




「忘れたなら、思い出させてあげよっか」
「おっ、覚えてますって! 今言ったじゃ……」
「あは、聞こえなーい」




太ももにおいてあった手がどんどん上がってくる。

やばい、こんなことしてたら本気で遅れる!
ってか、佐助さんなんでこんな朝っぱらから発情してんの!?





「だ、だめです!」
「いてっ! ちょ、なまえちゃん指逆方向に曲げるの禁止!」
「ゆ、油断も隙も無い!」
「だって、なまえちゃんが覚えてないって言うから……」





あんなに激しく愛し合ったってのにさ。と不機嫌そうな声で言った佐助さん。


この人は何を言ってるんだ!!

よくもまあいけしゃあしゃあと恥ずかしいこと言えるな!



ってか、私は覚えてるって言ったのに何この人は勝手に覚えてないって自分の都合いいように解釈してんの。


もうやだ、佐助さんはまだ思春期並みの性欲あるよ、絶対。
私の身体は私で護らなきゃ。






「シャワー浴びてきます!」
「一緒に浴びる?」
「結構です!」



佐助さんの楽しむようなやらしい視線を背中に感じながらも無視してベッドの下に散らばってる服を適当に着て、風呂場に駆け込んだ。



+++++









シャワーも浴び、朝食もとって仕事に行く時間になった。





「だから玄関までで良いですって!」
「いいじゃん、できるだけなまえちゃんと一緒に居たい!」
「佐助さんは一応病人なんですから安静にしててください!」
「もうとっくに治ったってば!」




すべての荷物を会社に持っていって仕事が終わったらそのまま自分の家に帰ると佐助さんに伝えたら、駄々をこねられた。

佐助さんはお泊りの荷物を佐助さんの部屋に置いたまま仕事に行って帰りにまた取りに来て欲しいらしい。



けどそんな事したら二度手間だし、もし佐助さんの言うようにすれば、多分佐助さんは私を車で家まで送ってくれる。


佐助さんには、もう今回みたいに倒れて欲しくないから休めるときに休んで欲しい。





必死で宥めたら全く納得してなかったけど渋々諦めてくれた。
これで何とか安心だ、と思って仕事に行こうとすれば今度は駅まで着いていくと駄々をこね始めた。



ほんとに、子供か!




通勤ラッシュの時間帯にそんな事したらパニックになる!
佐助さんだってこうなってしまうだろうって予想はできるはずなのに、何でこうもわがままになるかな……。



自分の市民に与える影響力を本当に弁えて欲しい。
町には佐助さんの髪形を真似した人だって大勢いるんだから。


もし駅まで着いてきたら即週刊誌にすっぱ抜かれて大ニュースになる。






酔っ払いを相手するように一から教えても、唇を尖らせたままそっぽ向いてまったく納得してない様子。

ああ、早く納得させて行かないと遅刻するってのに……!
そんな子供見たいな可愛い顔されても!


もう、本当に遅刻する!!



「佐助さん! 分かってくださいよ」
「やだ」



佐助さんって、こんなに子供っぽくて甘えただったっけ!?
違うよね? もっと大人で私をからかって楽しむような趣味の悪い人で、呼吸をするように嘘をつく人だったよね!?



こんなに聞き分けの無い駄々っ子だったっけ!?


まあ、そんな佐助さんも可愛くてしかたないんだけど!

自分の佐助さんに対する惚れようにため息が出る。



腕時計を確認すると、電車の時間ぎりぎりだった。



やばい、全力で走らないと間に合わない!





「俺様はなまえちゃんと少しでも一緒に居たいだけなのに……」




ぶつぶつと言ってる佐助さんに少し、いやすっごくときめいた。




ああ、こんなときにこんなに可愛いだなんて反則だ。
少しだけじゃなくてずっと一緒にいてあげたいけど、だめだ。

仕事行かなきゃ。



自分に鞭を打って背伸びして佐助さんに近づいた。





自分の唇と佐助さんのそれを軽く合わせて、離れる。







「私だって、佐助さんとずっと一緒にいたいですよ」





目を見開いて固まってる佐助さんを見て、顔が熱くなる。



ああ、それくらいのことをやらかしてしまったんだな。







恥ずかしくて堪らなくて、唇を手の甲で隠して振り向いた。






「い、行ってきます!!」






固まってる佐助さんを一度も見ずに玄関を飛び出した。




「……い、ってらっしゃい……」



ドアが閉まる瞬間ぼそりと弱々しく呟く声が聞こえた気がした。



(佐助さんって、キスに弱いのかも……)
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