『なまえ殿っ!!』 「いこいこー」 「俺らと行ったら楽しいってー」 どうしよう、本気で連れて行かれる……! 幸村も助けようとしてくれるけど、触れないんだからなにもしようがない。 「ああもう! 見てらんない!!」 悔しくて、涙がでそうになったとき、声が聞こえてきた。 え、この声……。 明らかに目の前の男二人ではない聞き覚えのある声が聞こえた。 「Ahー仕方ねぇな」 その声が聞こえた瞬間、男が二人ぶっ飛んだ。 「ぐはっ」 「がっ」 「え……?」 なんで? なんでこの二人がここに? 「大丈夫? なまえちゃん」 「さすけくんに、がんたいさん……?」 「What!? 眼帯さんって俺のことか!?」 男を公園の外に放り投げてた眼帯さんがこっちを向いた。 そんな眼帯さんを無視して、佐助君は申し訳なさそうに口を開いた。 「ごめんね? もう少し早く助けられたんだけど、政宗がもっとギリギリの方が格好いいとか言うからさ」 「はぁ!? 俺だけのせいか!?」 「……いつから見てたの……?」 「いやー慶次がナンパしに行って、俺様たちも行こうかと思ったらなまえちゃんが人込みを走ってたんだよね」 「それから、ずっと……?」 「うん、まぁそうなるよね」 うそ、はじめから見られてたの? じゃぁ、私が幸村と恋人みたいな雰囲気なってるときも……? 「っ!?」 ちょ、やばい。 実にやばい!! 「おい、なまえ。礼はねぇのか、礼は」 「ちょ、政宗。俺様たち遅れて出てきたのにそれはないっしょ」 「Ah? 遅れて出てきたからこそ、ありがたみが分かるんだろうが」 「うわーなんて自己中なのアンタ」 ああもう、幸村とのやり取りが見られてたことだけが気がかりで、それ以外はもうどうでもよくなってきた。 なんでこうなるかなぁ……。 かなり恥ずかしい。 「あ、そうだ。旦那って今なにしてる?」 「えっと、幸村は……」 目の前の出来事に驚いてばっかりで、忘れてた。 幸村を探すと、下を向いて震えていた。 「幸村……?」 私が呼びかけても幸村は返事をせずに、浮き上がった。 「え、幸村!? どこ行くの!?」 『……先に帰っておる』 ただ短くそう告げて、そのままどこかへ飛んでいった。 「幸村……?」 「どうしたの?」 「なんか、先に帰るって」 「Han,そりゃ、悔しかったんだろ」 「なにが?」 「お前を護れなかったことがだよ」 「私を……?」 幽霊なのに護れないのは当たり前じゃん。 そりゃぁ、物質に触れられる幽霊だったら別だけど。 それに、触れないながらも私を助けようと必死に動いてくれてたのに。 「仕方ないことなのに、なんで……」 「男っつーもんはそんなもんだ」 ……よくわかんないな、男の子って。 そう思ったと同時に、鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。 「いっ!?」 「なまえちゃん!?」 あまりにもの激痛にしゃがみこむと、佐助君も慌てて私の隣にしゃがんだ。 「くっ……!」 痛い痛いっ! さっきみたいな痛みだ、これっ!! こめかみを押さえて痛みに耐えてると、次第に痛みが治まってきた。 「あ、れっ!?」 「大丈夫!? さっきの男達に殴られたの!?」 「ううん、違うよ。ちょっとした頭痛だから。もう治ったし」 「ほんとに? すごい痛そうだったけど」 「大丈夫、大丈夫。じゃぁ、私帰るね」 立ち上がって、帰ろうとすれば眼帯さんが隣に来た。 なんだろ、眼帯さんも帰るのかな。 あ、そっか。 今からナンパしに行くのか。 「また酔っ払いに絡まれるかもしんねぇだろ。送る」 「そうだよね。なまえちゃんを一人で帰したら旦那に怒られるし」 すごい男前だよ、二人とも。 普通の女の子だったら惚れちゃうよ。 一瞬でメロメロ確実だね。 「眼帯さんに佐助君……ありがとう」 「……テメー、その眼帯さんってのはなんだ」 「眼帯してるから眼帯さんでしょ?」 「政宗だ」 「え?」 「政宗って呼びやがれ」 「政宗君?」 「……まあ、それでもいいがな」 「じゃ、行こう」 佐助君も隣に来て、家までの道を歩いた。 「送ってくれてありがとう」 「気にすんな」 「じゃ、おやすみー」 送ってくれた二人を見送って、家に入った。 「ただいまー」 「おかえり。お風呂入っちゃいなさい」 「はーい」 二階に、着替えを取りに上がって部屋を見渡すけど、いない。 どこに行ったんだろ。 先に帰るって行ったのにいてないじゃん。 「幸村……?」 呼んだその声は、虚しく部屋に響いただけだった。 (なんだろう、この湧き上がる虚無感は) [戻る] ×
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