『おいしい?』 差し出された肉に噛み付く俺。 目の前で俺に微笑みかけるイエロー。 いったい、何をやってるんだ俺は。 今日こそ恐怖で怯えさせるために来たんじゃないのか。 なんでまた肉なんか食ってんだよ! さっき朝食食って別に腹なんか空いてないのに。 『お前は本当に綺麗な黒い毛並みだね』 食べてる俺を邪魔しないように頭を撫でる。 『あのね、君の名前をクロって呼びたいんだけどいいかな。真っ黒だからって単純すぎ?』 俺の顔を覗き込んでくるイエロー。 相変わらず日本語だから何言ってるか理解できない。 何か質問してきているようだが内容も理解できないし、たとえ理解できたとしても犬だから答えることもできない。 やっぱりコイツは馬鹿なのか。 それとも喋らずにはいられないのか。 『クロって名前すごく単純だけど、ぴったりだと思うんだ』 無視をして肉に齧り付く。 『クロ! お前の名前はクロだよ』 クロ……? 一体何の意味だ? さっきからクロと連発しているが、一体どういう意味だ? 俺に語りかけてるようだし。 俺を呼んでいるのか? 『クロ、こっち向いて』 また出てきたクロという言葉に俺はイエローと目を合わせる。 肉は食べ終わったから骨は下に捨てた。 『わあ、よくできたねクロ!』 顎の下を撫でられる。 なんだかイエローは喜んでいるようだ。 『クロは今まで見てきた犬の中で一番賢いね。人間の言葉がわかるなんてすごいよ』 もしかして、クロって俺の名前か……? 俺に名前をつけたのか? お前が俺の名付け親だと……? しかも英語では聞きなれない単語だから日本語なんだろう。 そんな不名誉なことがあってたまるか。 こんな奴に名前を貰うならないほうがましだ。 顎を撫でていた手が移動して首の後ろを揉んだ。 もう片方の空いた手では耳の付け根を揉んできた。 くそ、こんなベタベタと触られて不快だ。 こんなやつに触れられるなんて吐き気がする。 今日こそ腕の肉を食いちぎってその腑抜けた面を恐怖で歪ませてやる。 へらへら笑ってられるのも今のうちだ。 直ぐにお前の肉なんて食いちぎってやる。 泣いたって許してなんかやらねえからな。 上げて上げて下に叩き落としてやる。 俺を下に見たことを後悔させてやる。 『ふふ、しっぽ振ってる。気持ちいいんだね』 (体は正直) [戻る] ×
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