「え、なまえと兄様、結婚するの……!?」 部屋で折り紙をせっせと折っていたカルト君の手が止まって私を見た。 目が見開かれている。 やっぱ驚くよね。 「まだだけどね!」 「え」 私がカルトくんにそう言うと驚いた声を出したのはイルミだった。 私も予想外で、カルトくんに向けてた視線をイルミに戻す。 なんでそこでイルが驚くの。 意味わかんない。 「まだ結婚しないの?」 「や、だって昨日の今日だよ!?」 「オレ、今すぐでも結婚していいくらいの心構えだったんだけど」 イルが真顔でそう言い放つ。 いや、真顔なのはいつものことなんだけど。 だって、今すぐ結婚だなんて。 今までそんなこと考えたこともないのに。 てか、付き合ってたわけでもないのに。 暗殺依頼はウソだったから焦って結婚しなくてもいいわけだし。 「そ、そんな……まずはお付き合いから……」 私の目を瞬きせずに見つめるイルミになんだか恥ずかしくなって尻すぼみになりながら答える。 私何言ってるんだろう。 まずはお友達からじゃないんだから。 お見合いか。 「……そういうものなの?」 「そ、そうだよ……多分」 私もほかの人と付き合ったことないからわかんないけど。 いきなり結婚は早いと思う。 婚約者として少しくらい付き合うのが普通じゃないんだろうか。 イルを彼氏として接したことなんて今までないんだから。 「ふーん、ま、一緒にいてくれるならなんだっていいけど」 肩書きなんかにはあまり興味なさそうに、さも当たり前のようにつぶやくイルミ。 「っ……」 やばい、今のめちゃくちゃキュンと来た。 顔がなんだか熱くなる。 あれ、なんでだろ。 今までイルが何も言ってもこんなに恥ずかしくなることなんてなかったのに。 「あれ、どうしたのなまえ」 「や、何でもない!」 「……照れてるの?」 「ち、違う!」 私の顔を覗き込んでくるイル。 なんだか楽しそうだ。 まるで私の足が痺れて立てなくなった時のような顔。 ……この顔、あんま好きじゃないな。 「オレ、なんか照れるようなこと言った?」 「言ってない!」 「照れてることは否定しないんだ」 「っ!」 なんで上げ足とんの! けど図星すぎて言い返すこともできない。 今日のイルはなんだか意地悪だ。 「……ねえ、他所でやってよ」 呆れたように視線を戻して折り紙を折り始めたカルト君。 (こんなの、犬でも食わないよ) [戻る] ×
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