「うっ……」 顔がくすぐったい。 柔らかい羽毛で撫でられているようだ。 なんだか、息が苦しい。 わからない。 息苦しさから逃れるために寝返りをうちたかったがお腹の辺りが重くて苦しい。 何か石でも乗ってるみたいだ。 頬に何かが落とされた。 ……水? なんで、水がかかるの。 意味がわからなくて緩やかに意識が浮上した。 うっすらと目を開ける。 寝起きでぼやけた視界には人が映った。 真っ暗ではっきりと見えないけど、このシルエットは見覚えがある。 水がまた頬に落ちてきた。 ……涙? どうして泣いてるの。 何か怖いことでもあった? 辛いことでもあった? 私に相談してくれたらいいのに。 自分の中に詰め込みすぎだよ。 私をもっと頼って。 全て声に出したかったけど息が苦しくて声が上手く出なかった。 「泣か、ないで……い、る」 空気が抜けるような小さな声が漏れた。 イルにちゃんと聞こえてるかな。 「っ!」 首を包んでいた何かが大きく震えた。 「泣かないで」 「なまえ……!」 目を冷たい何かが覆ってそれが手だとわかるのに時間がかかった。 熱く、震える何かが唇に当たる。 目の見えない、意識が完全に覚醒していない私にはそれが一体なんだかわからない。 ただ、気持ち良かった。 熱が離れて、目を覆っていた手がなくなり、目を開ける。 目の前には夜風に揺れるカーテンだけが広がっていた。 (これは、夢?) [戻る] ×
|