「ねえ、何してんの?」 二十二時。畑で明日の分の野菜を取っていると声をかけられた。 振り向けば、なんかいかにも悪そうな男が三人いた。 あれ、デジャヴ? 「あ、や……あの……」 え、どうしよう、これやばいんじゃ。 「もう、外にいる女っつったらこいつしかいねえし、こいつでいいだろ」 「おーもうこいつでいいよ」 「っ……なんなの!」 「最強の俺らに選ばれたんだよ、お前は」 「?」 「極悪非道のゾルディックを殺す正義のヒーローだよ、俺らは」 「はあ?」 ゾルディックを殺す? しかも極悪非道? なに言ってんのこいつら。 「決戦前夜の女に選ばれたことを光栄に思え」 意味わかんない。 本気でゾルディックを倒しに行くの? ここでピンときた。 パドキアは治安があまりよくない。 それは観光名所でもあるゾルディック家を倒して懸賞金を手に入れようとする輩がいるからだ。 こいつらも、これか。 「バカみたい」 野菜を持って立ち上がって家に帰ろうとする。 すると、いつの間にかほかの男が回り込んでた。 「どいて」 「ハッ、この俺等にそんな口を聞くなんてよ。強気な女だな」 「俺らは念能力を覚えた男だぜ?」 「ねんのうりょく?」 なに言ってんのこいつら馬鹿だ。 なに、俺には他の奴にはない特別な能力を持ってるんだ! ってか? ばかだ、本当に馬鹿だ。 「はいはい。頑張って。どうせイルにたどり着く前に殺されるだろうけど」 無視して強行突破しようとする。 「イルって、イルミ=ゾルディックのことか?」 「!」 しまった、墓穴掘った……! 「イルミ=ゾルディックの女か! いいじゃねえか。こいつめちゃくちゃにしたら最高だろうなあ」 「ちがう! 関係ない!」 嫌な笑みになった。 やばい。 なんか急にやる気になってる。 「野菜ごめん!」 謝って、かごいっぱいに入ってた野菜を投げつけて逃げる。 後で拾いに来るからね! 走り出したけど、何かが足に絡まってこけた。 「っ! なっ、なに!?」 「無駄だって、言ったろ? 念能力者なんだって」 何にひかかったの。 足元を見ても何もない。 ぬかるみも石もない。 なんでこけたの。 起き上がろうとしても何かに押さえつけられてるみたいで、起き上がれない。 倒れたままの私に馬乗りになってきた。 「や、やだ!」 「諦めろって」 「あんま騒がれると人来るんじゃねえ?」 「塞いどくか」 「んー!!」 手で塞がれた。 いやだ、いやだ! 「イルミ=ゾルディックの嫌がる顔が目に浮かぶぜ」 私の口を塞いでる汚らしい手を思いっきり噛んでやった。 「いってえ!!」 「はなせっ!」 緩んだところで思いっきり暴れてやる。 けど、また何かに押さえつけられたように動かなくなった。 なんなの……! なんなのこれ! 「こんの……クソアマァ!!!!」 ゴキッと嫌な音が鳴った。 何が起こったかわからなくて、目の前が白くなる。 「おいおい、あんま気合入れたパンチ入れてやんなよ」 「うわあ、折れてんじゃん。かわいそー」 左頬下がものすごく熱い。 なに、されたの。 視界がぐにゃぐにゃと歪んでよく見えない。 「血だらけじゃねえか。萎える」 「これがイルミ=ゾルディックの女だって思ったら?」 「そりゃ、燃えるな」 服がビリビリと破れる音が聞こえる。 感覚がなくて、体が少しも動かせない。 どうして。 なんで。 声が出ない。 視界が白く染まる。 「なにしてるの」 (久しぶりの殺気) [戻る] ×
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