「カルト君、ついてきてくれてありがとね」 「気安くボクの名前を呼ぶな」 「……う、ごめん」 「兄様の命令さえなければ、お前なんて……」 「う」 こわいなあ。 殺されるかもしれないんだ。 なんでこんなにカルト君に嫌われてるんだろう。 別にカルト君にはなんにもしてないはずなんだけど。 ……お母さんの影響かな。 多分そうだ。 しばらく歩くと、人が一気に増えた。 ということは、値札競売市が近づいたってことだ。 なんだかテンション上がってきた! 「カルト君! 何買う?」 勇気を出して話しかけてみる。 ここはお姉さんが買ってあげようじゃないか! 「ボクは人ごみとお前が嫌いだ」 「え」 「お前になんかついていかない」 「え、けど!」 「一時間たったら戻ってきなよ」 「あ、あのさ」 「この一時間で死ねばいいのに」 「ちょ、まっ!」 私の呼びかけなんか全くの無視で、どこかへ行ってしまったカルト君。 ……え、どういうこと。 私放って行かれたの? 一人でまわれってこと? ……なんてこったい。 仕方なく市を一人で周る。 まあ、一人でも十分楽しめるけどね。 けどカルト君に本当に嫌われてるんだなあ。 辛いよ。 イルからの頼みごとなのに躊躇なく放り投げるんだから。 イルのお願いよりも私が嫌いっていう気持ちの方が勝ったんだね。 ま、一時間しかないんだし今は市を楽しもう。 ふらふらと雰囲気を楽しんで周ると懐かしいものが目に入った。 「あ、これ折り紙!」 駆け寄って折り紙に触れる。 五百枚入りだ。 「懐かしいなあ」 小さい頃はいろいろなもの折ってたなあ。 なかなか私は折り紙上手いんだよ。 「お嬢ちゃん、それ欲しいのかい?」 「え、ああ……まあ」 やる気のなさそうなお店の人に声をかけられる。 「そうかい、そんな紙切れが欲しいなら持って行きな」 「え、けどこれって札にお金書くんですよね」 折り紙の上に乗っていた札をとっていう。 確かこの札にお金を書いていって競り合うんだよね。 競売って言うくらいなんだから。 「いいよ、そんな物どうせ売れねえだろうし」 「ホントですか! おいくらですか?」 「100ジェニーでいいよ」 「やった! ありがとうございます!」 お金を払って折り紙を受け取る。 久しぶりにこれで遊ぼ。 安かったし、いい買い物だったなー。 ほくほくとしてまた歩き出す。 こんな感じで掘り出し物に出会えたらいいな。 鼻歌を歌いながら歩く。 案外ジャポンの物もある。 けん玉とか扇子とかも置いてある店がある。 安いアクセサリーとかないかな。 安いけど安っぽく見えないやつ。 これだけあるんだからどこかにかはあるよね。 「なっ、え! おい!」 ネックレスとかがいいかな。 ブレスレットだと皿洗いとかの時に邪魔だし。 指輪は飲食業をやってる以上、仕事中は外さないといけない。 ネックレスは服の中に隠せるからいいよね。 「待てって! おい! ……なまえ!!!!」 「……え?」 足が止まる。 あれ、今私の名前呼ばれた? けどこんなところに私の知り合いなんて。 だって外国だよ、ここ。 私じゃないなまえって名前の人かな。 その可能性の方が高い。 周りをほんの少しだけ確認して歩き出す。 「なまえのくせに無視すんな!!」 「ひっ!」 腕を急に掴まれて心臓が飛び跳ねる。 反射で振り向くと、目の前にはわたあめ。 真っ白な、ふわふわの、わたあめ。 「き、き、キルア!?」 (拗ねたような顔をする愛しい弟を思わず抱きしめた) [戻る] ×
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