偽りのカレンデュラ 



月乃 : 著
自伝小説
なにもない私









「バレンタインって女子全員の生存競争の日だけど、ホワイトデーはバレンタインに選ばれた男子だけがお礼の有無を選択する日だから、フェアじゃないんだよね」


彼はそういって首をかしげるが、おまえは選べる側なのだから偉そうにする筋合いはないのだよ……そういってやりたかった。


そのかわり、


「で、そのアンフェアな日におまえさんはフェアな選択ができたんだろうね?」


苦笑いでたずねると、


「お礼だし。して当然だし」


サラッとおかえしをしてきたらしい。


我が子ながら、イヤミなドンファン。


私が小学生の時なんて、激しい生存競争の中、仲間たちとツルんで、キャーキャーと叫びつつ、背中をつついたりして「ちょ、やめろよ押すなよー」とかなんとかいって青春してたものだけどなぁ。


青春の質が違うらしい。


時代かしら?


「時代かしら?」


かたわらのダンナーに聞くと、


「時代」


首を縦に落とされました。ちなみにヤツも選択肢をあたえられる側だった。


ざまぁみろだ、我が青春。


そんなこんなで。


イジメにもあわず、仲間とバカ笑いできるほど幸せな小学生だった私が今、ふたりの別格ドンファンに恵まれ、ヒエラルキーの底辺にいられるミラクル。


ミラクルだし、アンフェアだ。


が『住めば都』もこれだけ長くつづくと、フェアな人生にあこがれるほど退屈なものとも思える……本音をいえばね?




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