その顔は封印

どうして、キミはそんな悲しい笑みを浮かべるんだろう。ボクは気に入らない。その表情が。たしかにそれは凄くキミに似合ってるよ。こっちが悲しくなるくらいに、その表情はキミの過去を表している気がする。ボクだって馬鹿じゃない、キミが過去に何かあったんだろうってことは分かるんだ。具体的なことは少しだってわからないけど。
「シェゾ」
「何だ」
目を少し細めてこっちを見る。口はへの字。この顔が爽やかに笑ったとしたら、ボクはひっくり返って明日世界の終わりが来ることを信じるんだろうな。

「キミはどうして、時々悲しく笑うの」
「……さあな。誰だって時々は、感傷的に、自嘲的になりたいだろう」
「そうかな」
「ま、お前はお気楽のーてんきなお子様だもんな」
「なにそれ、ボクだって重ーい悩みがあるんだから」
「どうせ、明日カレーが世界から消えたらどうしよう、だろ?」
「それも大事だけどね。キミがいい加減ボクの魔力、諦めてくれないかなーとか」
「……それか、重い悩みが。邪魔なわけだな」
その笑みだよ、それ。
「その顔は封印してよ」
「は?」
「そういう笑みは、禁止。そんなんだから暗くなるんだよ」
「……」
「それと、さっきのはウソ。ボクの重い悩みはキミが心から笑ってくれないこと、それと幸せじゃなさそうなこと」
「だとしたら「悩みは解決しない? それはないよ、いつかは解決するんだから」
「……ほっといてくれよ」
「やだー。というわけで、その顔は封印! よろしく!」
「……はあ」
いつかキミが心から笑えますように。それがボクの願いなんだ。

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