Après un rêve ~夢のあとに~

夢の中に俺は、お前の幻想を見ていた。
「アルル? お前……そうなんだろう?」
お前は何も言わずに、少し微笑んでみせた。その眼差しはいつも通りに、いやいつも以上に優しかった。輝いていた。確かに光っていたのだ。俺はお前を捕まえられずに、ここに留めておくことさえできずにいた。
お前はゆっくりと口を開く。
「今くらいはさ、楽しんだらいいんじゃない?」
その声は澄んでいた。それと同時にぼやけていた。
何処かへ離れていくようなお前に、慌てて声をかけた。
「おい、何処へ行くつもりなんだ」
「そうだなあ……強いて言うなら、光の彼方? キミも一緒についてくればいいよ」
いつもの俺ならそんな馬鹿なことを言うんじゃないと思っただろうが、違った。本当にそうかもしれない。
ふわりと浮くような感覚に驚愕する。と同時に多幸感があった。お前に手を引かれ高いところへと登る。
美しかった。お前も、その景色も、何もかもが。神の後光が見えそうな気がした。そんな場所だった。しかし後ろから差し迫る黒い影を感じ、夢中で上へのぼる。
「そんなに心配しなくてもいいのに」
「恐ろしいんだよ」
「そうだな……キミが生きたいと思うのなら、その黒い影に捕まったって関係ないよ」
「そうか……? ならば」

それきりだった。ああ、それきり。夢は醒めた。ああ、あぁ、なんて辛いんだろう。
叫ぼうかと思ったほどだった。ああ、お前の幻影を返してくれ。もう、ダメだ。何かがダメだ。多分お前はいない。いないのだ。何故こんな夢を見たのか。窓の外は土砂降りだった。

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