大晦日の策略

寒くてしかたのない昼。最近アルルを見かけない。魔力探知さえしてしまえばすぐに見つかるだろうが、なんとなくしたくない気分だ。そんなこんなで大晦日。年の瀬か。今は晴れているが、夕方には雨が降るらしい。どうせ夜になってサタンのところに行けばアルルはいるだろうから、わざわざ昼に探す必要性も感じないが。それでも最近勝負もしていないし、退屈なので、探しに行くことにした。

「ふむ、家に来てみたがいないもんだな」
まああいつのことだ。家でおとなしくしているわけもない。大掃除は早めに終わらせると二週間前に言っていた気もするから、ルルーのところにでも行ったのかもしれない。
「あらヘンタイ。アルルの家の前で待ち伏せでもしてるの? ホントヘンタイねえ。残念だけどアルルはいないと思うわ。どこかに出かけるって言ってたもの」
「変態は余計だ」
「じゃあ、やっぱりアルルを探してるわけね」
こいつにこれ以上何か言われるわけにはいかない。空間転移を唱え、その場を離れる。
「逃げたわね……ヘンタイ。本当にあれじゃストーカーだわ。全く、何考えているのかしら」


「くそっ、聞こえてるぞ脳筋め! まあいい、それよりも……」
アルルを探さなくては。本当に退屈だ。こうなったら魔力探知をしてしまおうか。いや、やめておこう。この目で、見つけるのだ。
と、なると。気に入らないがサタンのところかもしれん。一応見ておかなければならない。
「面倒くせえ……どうやって聞くかだよな」
「何をブツブツ言っておる、変態が」
「俺は変態じゃねえ! ……サタンか」
都合良すぎだろ、と言いたくなったが、面倒な過程がどこかにいったので良かったかもしれない。
「おい、サタン! カー公なんか連れてどこへ行く気だ! アルルでも探してるのか」
「そんな変態なことをワタシがすると思うか?」
いや、いかにもしそうだろ。
「ワタシは待つ側の人間だからな、ハハハハハ! カーバンクルちゃんと仲良くお散歩に来ているのだ! アルルは今ダンジョンに入っているからワタシにカーバンクルちゃんを預けたのだ」
「そうか。サタン、お前には用はない。じゃあな」
またも空間転移で移動する。
「なんなのだ、あいつ」


「となると、アルルはダンジョンか。……勝負出来ねえじゃねえか。くそっ」
魔力をかなり消費した後のアルルに勝っても意味がない。だからもう探す必要はない、のだが。しかし急にあいつの魔力の残り香が感じられた。多分この近くのダンジョンに入ったのだろう。となるとこのまま帰るというのも腹立たしい。帰り道にあいつが通るであろう湖で待ち伏せでもしよう。ついでに薬草摘みでもするか。

「……」
暇だ。薬草といってもあまりいいものは手に入らなかった。当たり前といえば当たり前なのだが。もう暇でしょうがない。今はまだ二時。あいつが帰るのは早くても四時だろうから、あと二時間ばかりここで暇な時間を過ごさなくてはならない。なら、もう昼寝でもするしかない。暇すぎてつまらん。眠い。

このあと、起きるのが遅すぎて会ったアルルにいきなりお前が欲しいと言ってしまったのは、また別の話だ。


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