昔から時間を測るのが好きだった。多分毎日片手にストップウォッチを持って遊んでいたせいだと思う。なにをするにもストップウォッチ片手で、ついたあだ名はウォッチマン。高校に入ってもそのくせは全く治らずに、今もストップウォッチを片手にしている。カチッ、手にあるストップウォッチを押した。ジャスト14分30秒。この時間は私が昼食を食べている間の時間である…と、同時に。目の前の文字通り真っ赤っかな少年、鳴子章吉さんが棒立ちしている時間である。

「鳴子さん」
「、な、なんや」
「いつもいつも14分30秒、無駄に何してるんですか?」

純粋な疑問である。私が昼食を食べるその時間、いつも彼はただ突っ立っているだけなのだ。14分30秒の、無駄な時間の浪費に彼にとってどんな意味があるのだろうかとただ疑問であるだけなのだ。

私の言葉に、鳴子章吉さんは「はぁ!?!」と大きな声をあげて何故かソワソワとしだしてしまった。すかさずストップウォッチをカチカチッ、とクリックする。最早これは習慣であるから、治せそうにない。

やがて静まった彼のソワソワに、私は手元のストップウォッチを止める。1分10秒。…また、無駄な時間の浪費ではないだろうか。

「ねえ、鳴子さん」
「っ!?!」

ずい、と鳴子さんに近寄って顔を近付ければ、彼はかっと目を見開いて仰け反った。なんだその反応、と思うもののそれを追求するのは時間の無駄なので私は自分が聞きたいと思ったことを聞こう、そう口を開こうとした時、

「な、なんやねんそれ反則やろ!!!」

とトレードマークの赤い髪と同じくらい頬を赤くした鳴子章吉さんは私に口を挟む寸分の隙も与えずにサッと身を翻して去って行ってしまったのであった。この間、実に6秒である。一瞬ぽけっと呆気に取られてしまったのだが、こんなに早い動きを見たことのない私はこれ以来鳴子くんのことをすこし尊敬し始めるようになったのであった。


ーーー

「あっ鳴子君おかえ…今泉君、また駄目だったのかな…?」
「さあな」
「…あ、あんな顔近づけるとかみょうじのドアホー!!!」



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