「あーっ!福富先輩惜しいです!頑張ってください!荒北先輩邪魔です消えて!」
「っせ!みょうじ!!!明らかな贔屓すんなヨ!!!」
「何分素直なもので!!! 」

なんて荒北先輩が噛み付いて来たのだがまあ正直福富先輩を見るのに忙しくて荒北先輩が邪魔で仕方ないのもわかってほしい。一々私の視界の福富先輩と被ってきて鬱陶しくて仕方ないのだ。今日は箱根学園の球技大会である。箱根学園の球技大会は全校をあげての大掛かりなもので、丸一日授業を潰して開催される。なので、雨が降ったら授業に代わるこの日は皆晴れを願うのである。クラス対抗戦となるこの球技大会はサッカー、バスケットボール、バレーボールと各個人どれか一つに必ず参加しなければならない。男女分かれてどのクラスが総合優勝かを争う運動部の強い箱根学園ならではの行事である。

…さて、私ことみょうじなまえ。私は実はこの時間バレーボール(運動が苦手な子がぶち込まれる)をやっている筈なのだが、福富先輩のクラスがこの時間にサッカーをするということ、福富先輩がサッカーに参加するというのを調べ済みだった私は自分のクラスのバレーボールをガッツリサボらせて頂いている。福富先輩の華麗なプレイを見るためなら同じクラスの黒田とかいう福富先輩と比べたら輝きの一つもない地味男子(笑)に怒られるのもなんのそのだ。

ピピーッ!という笛の音が聞こえて(まさか福富先輩がまた点を…!?)そう思ってがばっ、と顔を上げるとシュートしたのは荒北先輩の様だった。はあ、と私が溜息を吐くと「おいみょうじ溜息吐くんじゃねェ!」と目敏く注意された。察しの良い先輩を持ってしまって面倒だぜ…なんて正直思った。内緒にしておこう。そして福富先輩が一点決め(カッコよすぎて死ぬかと思った)、サッカー部門で優勝を果たした福富先輩と荒北先輩は二人で拳をぶつけ合って喜んでいた。私もその姿(荒北先輩は除く)をうっとりとながら眺めていると、ガシッ、と頭を鷲掴みにされる。

「!?!な、なにやつ!?!ててて敵襲ー!!!」
「オウ、そうだな」
「く、くくく、黒田くんこんにちはご機嫌いかが!?!」
「悪くはねェな…な、みょうじ?」

私の頭を鷲掴んでいる黒田くんの表情は新開先輩に負けず劣らず鬼の様である。黒田くんなんて何のその、とか思っていたがそんなことなかった。取り敢えずサボり場面をガッツリ見られてしまったこの状態をどうしようかと左右をちらっと見てみたものの、皆に目を逸らされてしまった。黒田くんがどれだけ恐ろしい顔をしているのかよくわかる事案である。

「みょうじ!」
「はっはははい福富先輩!すすす素敵でしたかっこよかったです!!」

どうやって黒田くんから逃げようかと頭を回らせている時、福富先輩がこちらに向かって走ってきた。黒田くんは流石に福富先輩に見られるのはまずいと思ったのか、私の頭を鷲掴む指先から力を抜いたので私は福富先輩の方にぐりっと顔を向けた。

「ああ、お前の応援…よく聞こえていた。有り難う、お前のお陰で勝てた」
「〜っは、はい!!!」

黒田くんに荒らされた髪をどうにか整えながら福富先輩を見上げれば、先輩は口元に僅かに笑みを携えながら私の、そう私の頭の上にぽん、と手を置いてくれた。軽く撫でられたその感触に天にも昇る心地になっていると、福富先輩は「お前のバレーボールも応援させてもらおう」なんて仰ったので私はすぐに黒田くんを引っ張って体育館へと戻った。…にしても、福富先輩は私がバレーボールって何で知ってたんだろうか…まあ何でもいいや!

「おいみょうじ下手くそ!」
「うるさい!荒北先輩は黙ってて下さい!」
「お前なりに頑張ったならいいんじゃないか」
「ふ、福富せんぱぁい…」
「(とっととくっつけヨ)」

結局の所、私のクラスは私の加入によってボレーも出来ない私を集中砲火され惨敗してしまったものの、その後福富先輩が慰めてくれたのでどうでもいいです!



2014.03.03 HAPPY BIRTHDAY 福富さん




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