東京から京都に高校入学と同時に引っ越してきた私は、京都伏見という高校に入学した。慣れない土地での、入学式。緊張してうまく息が吸えない私の隣には細くて、長い…背の高い男の子が座っていた。新入生一人一人が名前を呼ばれ立ち上がるその時に、彼は気だるそうにゆるりと立ち上がった。…名前は、みどうすじあきら、というらしい。ちらり、と見上げていれば彼から気だるそうに見返されて、思わずひゅっと息を呑んだ。
うまくは言えないけれど、私の御堂筋くんへの興味はここから出てきたのだと思う。それ以来…いや、だって御堂筋くんとは一度も話したことがないんだもん。
一目見ただけでぞくりとするような、そんな何かを持っている御堂筋くんに私は釘付けであった。
文字通り、釘付け。それが、聡い御堂筋に見つからない筈がなく、私はとある放課後に、彼に捕まってしまった。
「…君ィ、よく僕のこと見とったけど何なん?」
ぎょろり、そんな擬音が似合いそうな目付きをしている御堂筋くんに背筋がぞわぞわした。ずっと見ていた、あの瞳に、今、私だけが写っている。その事実が齎す高揚感に私の胸は鼓動を早めていた。どくりどくり。震える心臓に鞭を打つ。
「べ、別に気のせいじゃ…」
「ハァ?誤魔化しきれるとでも思ってるん?アホちゃうの」
薄暗い校舎裏、日の当たらない場所から逃げようと後退るのに気付いた御堂筋くんが私を逃がさないように、なのか、その細く長い両腕を駆使してわたしの顔の横にどん、と手を置いた。お、おおう、これは噂の壁ドンってやつでは…!とドギマギする私に気付いていないのかそれともスルーなのか、御堂筋くんは私を静かに見下ろしていた。なんだかそれが無性に嬉しくて、へらりと笑みを浮かべていれば、御堂筋くんは驚きに目を見開いた。
「…何やの、それ…キモ」
「…う、嬉しいんだよ、うん」
素直に気持ちを吐露すれば、遥か上に位置する御堂筋くんの表情がぱきりと固まってしまったのがすぐわかった。御堂筋くんはなぜか人と距離をとるから、もしかしたら、恋なんて、わからないのかもしれない。でも恋というのは突然始まるものであって、落ちてしまうタイミングだって突然だ。私は多分、御堂筋くんを初めて見た時から恋に落ちていた、と思う。彼を観察している間、私の心臓はどっくんどっくん高鳴っていたし、頬が熱くなる感覚だってあった。もしかしたら、御堂筋くんは恋がわからないから、私のこの熱い視線を敵意と勘違いしてしまったのかもしれない。そう考えると、なんだか悲しくなってしまった。私の気持ちは、届いていないのだ。
「す、す、き、だから、御堂筋くんのことが…」
ひくり、とひくつく喉でどうにか声を出す。突然のことに御堂筋くんは真顔になってしまうかもしれない、気持ち悪いと思うかもしれない、そう考えると視線を上げることは少し難しかったけれど恋する乙女の意地という奴で、どうにか顔を上げた、ら、他の人にはわからないかもしれない程度に、ずっと見てた私だけがわかる程度に、ほんのりと御堂筋くんの耳が赤く染まっているのに、気が付いた。ぱちぱち、と驚きすぎて目の前に星が弾けているような錯覚をする。ねえ、かみさま、これは期待してもいいのでしょうか。
流星ワルツ
優さんリクエスト、御堂筋を観察する、でした。リクエスト有難う御座いました!