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東峰と似た者同士
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「…#みょうじ#に嫌われてる?」
「…た、多分」
ぱし、自分の方へと飛んできたバレーボールを受け取って、澤村はぱちくりと瞬きをし、大きな身体で縮こまる動きをしている東峰を見た。いきなり何を言い出すかと思えば、と澤村が勘違いだろうという旨の言葉を掛けようとすると、「流石にそれは旭の考えすぎじゃないか?」と困ったように眉根を寄せた菅原が寄ってくる。
「#みょうじ#って旭と一緒で気弱いじゃん?嫌うようなことしてなきゃ嫌われないと思うけど…」
それともお前まさか…とからかい混じりに菅原が東峰を見遣れば、東峰は慌てたように両手を目の前で左右に振った。
「ま、まさか、そんな事…ない…ハズ…?」
「せめてそこは自信持てって…」
「どうしてそう思ったんだ?」
澤村のその言葉に、東峰は視線を泳がせた。視線が右往左往する。こりゃダメだ、そう判断した菅原が口を開いたその時、東峰はぱっと顔を上げた。その瞳はしっかりと前を向いていて、鋭い眼光をしていた。試合以外でこんな表情を出すとは珍しい、と澤村と菅原が顔を向かい合わせた時、東峰は口を開いた。
「確証はない、けど、目が合ってもすぐ逸らされちゃうっていうか…」
へえ、菅原と澤村は小さく声を上げた。純粋な驚きからである。
「#みょうじ#さんのこと考えると胸が痛くなって、」
ほう?菅原と澤村の眉が少し寄った。眉間には皺が出来た。
「…苦しくなるんだよ、うん。なんか、他の奴と話してると特に。」
それは東峰が自らが確認するような響きを持っていた。その証拠に右手は最初忙しなく宙を彷徨っていたのに、最後にはウェアの胸元を握っていた。これは…菅原と澤村は再び目を見合わせ、こくり、と一つ頷き合った。
これは恋だな。
ーーー
#みょうじ##なまえ#は気弱な人間だった。クラスメイトから見た印象もさして変わらず、本人もそれを自覚していた。気弱で物静か、そんな彼女はいつもクラスの所謂地味系に属していた。菅原は異性と関わるのが苦手そうだと同じクラスで過ごしている数ヶ月のうちに感じていた。ただでさえ強面な旭が話し掛けたら確実に逃げるだろうなあ、そんな風に澤村と東峰と話し合った結果、クラスも同じだし割と地味系の子達と会話したりもする菅原が探りを入れることとなった。
人の恋路を手伝うという、何とも言えぬその高揚感に身を包まれながら、菅原は緩む頬をそのままに読書をしている#なまえ#の前に立った。#なまえ#は突然目の前に立った菅原にぴくりと肩を震わせるも、ちらりと見上げたのみで素知らぬ顔で再び本を読み始めた。
「#みょうじ#さん」
「…は、はい。何ですか…」
にこっ、と笑ったままの菅原からの言葉に#なまえ#は再び肩を震わせた。けれど、今度はしっかりと菅原の方を見上げた。#なまえ#が意図しているのか、二人の視線は交わらない。