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金城さんが大好きな幼馴染は箱学生
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(一話)
私には、秘密がある。
一つ目、実はアニメとか漫画が大好きだけど周りには隠している隠れヲタク、ってやつであること。
二つ目、鉄仮面とかクールなんたらとか言われてるけど、本当は内心死ぬ程焦ってたりだとか人見知りなだけ。
三つ目、文学少女だと思われてるみたいだけど、読んでる本は大体がライトノベルとかアニメのノベライズ。
誰にも言ってないとは言え、何故私がハコガクのクールなんたら、とか言われてる理由がよくわからないし、周りは皆そう思い込んでいるお陰で私は三年になる直前の今でもまともに自分の本性というか、本音?を話せる人が学校にいない。本当はアニメの話だとか、漫画の話が出来る人と一緒にいたいのに、私の側に寄ってくる子達は自分のメイクがどーたらこーたら、あの雑誌の服がうんたらこーたら、よく知らない言葉ばかりを喋るのだ。元々あまり喋る方ではないし、そんな話題が私の周りで上がっている時は大体私は昨日見たアニメとかのことを考えることにしている。彼女達は誰かに聞いて欲しいというより自分が話せればそれでいいというタイプなのだ。やっぱり幼馴染と同じ学校へ行けば良かった、そう思って溜息を吐くと、目の前に立つ、名前も知らない物静かそうな女の子の肩が大袈裟なまでにびくりと震えた。彼女には申し訳無いが、正直私はこの放課後のお誘いには乗り気ではないので溜息くらい許して欲しい。…そう、私が困っているのは、これだ。
何故か、女子に告白される。
どうしてか、なんて私にはわからないしわかりたくもない。…が、月に何度かのペースで下駄箱に可愛らしい封筒に包まれた手紙が何故か届くのだ。しかも大体は知らない子ばかりである。まず、私にはソッチの気は無いし、知らない子と共に時を過ごすなんてはっきり言って首を締めるようなものでしかない。毎度毎度のことではあるけれど、断る方も心苦しいのをわかってほしい。
「ごめんなさい、私貴女のこと知らないから」
私の言葉に、ぱっと顔を上げた少女の頬には涙が伝っていた。嗚呼、その表情。毎度の事だけれど、その表情を見るのが心苦しいのだ。私は口下手な方であるので私の断り方も涙を流す要因になっているだろうということはわかるのだ。私だって本当は「ごめんなさい、私貴女のこと知らないから友達から始めましょう?」と言いたいのだ。しかし、このチキン野郎は蚊の羽音ぐらいの大きさで無いと後半の言葉が言えないのだ。許して欲しい。
彼女に背を向けて歩き出すと、傍の草叢から二人女の子が飛び出して来て、先程私に告白してくれた子を慰め始めた。…そう、いつもの光景。心の中で、ごめんなさい、と呟いて、再び歩き出せば背後からは小さな嗚咽とオロオロとする女の子の声。これが男子からならば、どうやら私が断った理由が広まってこういう行為をしてくる人は減る、ようなのだが女の子の場合はやはり自分の信頼する友人以外にはこういうことがあった、とは言えないらしく、定期的に違う子から告白を受けてしまう。一体どうしてなのだか、ふう、と息を吐いて、図書室の扉を開く。こちらは私の日課であって、心苦しい行為の為ではない。
司書さんのいる方から見て、一番右後ろ。左を見れば、広い校庭が一望出来るその席。そこが私の定位置であった。本当はこの学校に入りたくなくて、それでも二年間なんとかやれてきたのは。
「(…あれの、お陰だよなあ)」
ペダルを漕いで、風を切って行く姿。その姿にあの人の面影を重ねてしまう。
「いいなあ」
だなんて、今更言うには遅すぎるし、あの人との約束を破ることにもなるけれど。…それでも、寂しいという気持ちには誰も勝てないだろう。二年は耐えた、だから。
「…もう、」
我慢しなくていいよね
ぽつり、呟いた声は誰もいない図書室で誰にも拾われることなく消えてゆく。私は、ただ一つの小さな決意を胸に抱く。コミュ障を自称する私ではあるが、こうと決めたら何が何でも叶えてやろうと思った。と、なれば。まずはクラスメイトからだ、そう思って私は静かに図書室を出る。
これが、私の運命を変えるとも知らずに。