◆A 御幸と優柔不断 :
昔から優柔不断と言われ続けてきた私は実にその通り、本当に優柔不断で二択にするまでにもとても時間がかかる。だから昼食時は家から飲み物を持ってくるのだけれど、今日は体育があったのでそれを二限目で飲み干してしまった。…と、なれば買うしかないわけで。とっとと帰ってきてね、という友達の声を背に悠々と歩んだ私は、自動販売機の前で何を飲もうか十五分悩んでいる。漸く無難にご飯に合うように緑茶か奇を衒ってサイダーを買うかの二択に絞り込めた。私にしては早いじゃないか!と小さくむふふ、と笑えばビシッ、頭に衝撃が走った。

「いっ!?な、何奴!?!」
「#みょうじ#決めるの遅すぎ」

ニッカリ、私の背後で白い歯を見せて笑うのは青道の二年ではまず知らない者はいない(かもしれない)と言われている御幸一也その人であった。今まさに私の頭を叩いたくせにそんな笑顔を浮かべられるなんて彼はどうかしてるのかもしれない。あ、いやそれ今更だったわ。

「…なんか失礼なこと考えてね?」
「…は、ははっ!そんなまさか!」

へえ?と何故か楽しげに私の顔を覗き込んでくる御幸くんからサッと目を逸らす。大体私は御幸くんに構っている暇はない。さっさとこの二択を決めなければならないのだ。早くしないと呆れた友人が昼食を食べ終えてしまうのだ。ちなみに既に四回は先に食べ終えている光景を見たことがある。ぐるりと御幸くんのことは無視することにして、自販機に向き直る。

「今どこまで絞り込んだ?」
「二択…二択からがまた悩むんですよお…」

へえ、と割と考えてくれているような声色だった御幸くん。気を遣ってくれるのかな?と思いきや、御幸くんには動く様子が全くない。クエスチョンマークを浮かべてその表情を伺うと、御幸くんは何故かニッコリと笑顔を返してきた。ちょっとよくわからない。

「なあ、#みょうじ#」
「何ですか御幸さん…うーん、サイダーは三日前飲んだ…いやいやしかし緑茶は家で飲める…う〜ん…」
「俺と付き合わねえ?」

はて、空耳かな?
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