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「真奈美ッ!!!!!」 そう呼ばれると私は三蔵に抱き締められた。 三蔵の肩越しに見えたモノは血を流した李厘と割れた地面、そして壊れた建物だった。 「…え?な、にこ…れ」 三蔵を見上げれば三蔵の頬にも軽い傷跡。 「わたし…がやっ、たの?」 何故だか掠れている声を出して尋ねる。 「…気にするな」 ただ一言のその言葉に自分のしたことだと気付かされる。 と、またしても頭の中に過る映像。 「誰…?」 謎の少女と男に見覚えがあるような気もするがわからない。 私は痛くなってきた頭を押さえながら暗い闇の中へと意識を手放した。
「…はぁ」 三蔵はため息をつくと辺りを見渡す。 先程よりも開けた視界の代わりに建物は無惨にも粉々になっている。 「三蔵、先程の真奈美さん…」 そう八戒が尋ねる途中で言葉を遮るように三蔵は一言 「俺とお前と一緒だ」 そう言った。 『誰…?』 その台詞が頭を過る。 こいつは何を視たのだろうか… 気を失った彼女をじっと見つめる。 「おい大丈夫か」 「ん〜びっくりしたけど大丈夫」 敵サイドに聞けばとりあえず平気そうだったので放っておく。 「やはりこの女殺す」 その言葉に目だけそちらを見れば真奈美を睨み付ける兄の姿。 「元々はソイツが地雷を踏んだせいだが」 そう言って李厘を指差す。 「まあ、とりあえず生きてるんですからいいじゃないですか」 「そうですよ紅孩児様!」 八戒がそう言うと女もそれに同意していた。 「ふんっ…今日のところは退かせてもらう。とんだ邪魔が入ったしな……ひとつ、詫びておこう」 紅孩児は拳を握り緊めて真っ直ぐな目をして言った。 「俺は自分の歩んでいる道に疑問を抱いていた。迷いをもって闘いに挑んだことは貴様らに対して無礼だったと思う……だが俺には、善悪では計れないほど大事なものがある。だから次は全てをかけて、貴様らを倒す」 それを聞いた悟空は、満足げに笑うと悟空と紅孩児の約束、もとい宣戦布告が交わされた。 「さ・ん・ぞー!今日は楽しかったよーー!!また来るからねー一緒に遊ぼーね!あとお姉ちゃんに謝っといて!」 「誰が遊ぶかこのクソガキッ」 紅孩児の頭に乗りだして楽しそうに言った李厘に、三蔵は中指を立てて答えた。
アイツらが帰った後真奈美が目を覚ました。 その目は濁っていて前に見た雨の日とはまた違っていた。 「おい、真奈美大丈…」 そう言いかけた途端後ろから呻く様な声。 バッと振り返ると八戒が踞っていた。 「ちっ…どいつもこいつも」 そう言うと三蔵は顔をしかめて舌打ちをしたのだった。
「やはり貴女の事がワタシは気に入りましたよ…真奈美」 そう言って地上を傍観する清一色は厭らしい笑みを浮かべてそう呟いた。 『虹色に輝く龍よりも暴走して仲間さえも傷付けた貴女は最高に素晴らしかった。』 そう清一色は心の中で思うと目を細めて猪八戒と真奈美を眺めるとその場から消えた。
「早く堕ちてきてください…二人とも」
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