「…ん〜。見ててもつまんないなぁ」
私はふらりとその場から離れると目の前に肉まんの屋台。
私はそこに駆けていくとお金を置いて一つ手に取る。
「う〜美味しいッ!!」
そもそもコンビニで売っている事は知っていたが食べたことの無かった手前、肉まんはとても美味しく年相応の笑顔で食べていた。
「おや、先程の旅の方じゃないですか。貴女は、猪八戒のお仲間ですか?」
「…仲間ですけど、貴方は八戒の知り合いですか?」
"清一色"が話しかけてきて思わず目を見開きかけたがなんとか演技をして会話をすると、突然笑い出した。
「これはこれは!猪八戒はまた性懲りもなく守れないものと一緒にいるんですか!!実に良い」
「占い師さん、どういう事です?」
こちらに向いた男の顔は口を弧に描き狂喜に歪んでいて気持ちが悪い。
「そういえば名前を教えていませんでしたね。 ワタシの名は清一色。 貴女のお名前は?」
「…教えません」
不気味な雰囲気は漫画でも思ってはいたがそれ以上の雰囲気を醸し出していてムッと顔をしかめる。
身の危険を感じて私はゆっくり後退りすると、清一色は迫ってきて所謂壁ドン状態になり思わず生唾を飲んだ。
「貴女は教えられてはいないようだ。猪八戒の過去を」
「別に…そんなこと知らなくたって八戒は八戒ですので」
冷や汗を流しながらも、それを悟られない様にそう言うとニヤニヤと笑われて少し腹が立った。
「怯えているのに威勢が良いですね。実に滑稽だ。ワタシは貴女の事が気に入りましたよ。仲間同士なのに隠し事をされて一緒に居る、可哀想な貴女を、ね」
そう言ってさらにニヤニヤと笑う清一色は、私の頬を撫でてきて思わず手を振り払う。
「そんな貴女と『猪八戒』に 、僕からのプレゼントです。貴方たちに、愛を込めて」
そう言って笑うと清一色は一瞬で屋根の上に移動しており、自分の耳からピアスを引き千切った。
「それでは」
そう清一色が言うと突如背後から地響きが聞こえる。
バッと振り返ると先程、倒れていたはずの蟹の式神が起き上がろうとしていた。
清一色の方を振り返ると既に清一色の姿はどこにもなく、屋根に上ると変わりに、点棒と麻雀の牌が落ちていた。
『仲間同士なのに隠し事をされて一緒に居る、可哀想な貴女を、ね』
清一色の言葉が頭をよぎった。
「私も同じよ」
そう呟くと一行の所へと駆けていった。

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