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目を覚ますとそこは室内で、ベッドに寝かされていた。 ゆっくりと起き上がれば少し目眩がする。 「あ、真奈美さん」 少し頭を抱えていると声が聞こえた。 「三蔵は大丈夫?」 「ええ、それより真奈美さん。今回のこと…」 そう言われて自分が何をしたか、そしてそれより前のことを思い出し俯いた。 「嫌いになりましたよね?」 「ええ」 八戒の返事にツキリと胸が痛む。 やはり旅はここまでかな… 「自分の命を粗末にするのはやめて下さい」 「え…?」 思わず顔をあげると八戒は意外と近くにあり、その真剣な眼差しに自分の心を見透かされているように思えて目を逸らしたくなる。 「僕は自分の命を大切にしない方、嫌いなんです」 もう一度そう言われて過去とは違う言葉に涙が零れた。 言われたことのなかった台詞が嬉しかった。 「…生きて良いんですね」 そう小さく呟くと八戒に抱き付いて泣いた。
泣き疲れた真奈美さんをまた寝かせて僕は悟空を探す為に廊下を歩いていた。 『生きて良いんですね』 先程の彼女の小さな呟きに過去になにがあったのか想像できなくもない。 しかし彼女はかなりの役者はず、それよりも前の話だろうか…? そう思考を巡らせていた。 「悟空 やっぱりここでしたか」 三蔵の部屋に入ると悟空が椅子に座ってじっとしていた。 意地でも動かないと言いそうな悟空の隣に座る。 と、ドアの外で微かな音。 おそらく彼女だろう。 「…俺、三蔵に助けられてばっかだ 何にもできないのな俺 三蔵の為に」 「でも、「誰かの為に」なんてはまず「応える」ことだと思うんです 例えば僕を信頼してくれる人がいるなら 僕は自分自身を精一杯守り抜きます」 この言葉は悟空にも真奈美さんにも伝えるように話した。 特にドアの外の彼女に向かって…
私はドアの前で入るか考えていると悟空と八戒の会話が聞こえてきた。 そして八戒の言葉に自分のしたことが間違いだったことに気付く。
と、悟空が厨房に行くらしく慌てて風になる。 八戒も三蔵に向かって呟くと出ていった。 私はその背中を見ながら元の姿に戻ると目の前のドアをノックした。
入ると丁度起きたのか狸寝入りをしていたのかはわからないが三蔵は目を覚ましていた。 私は三蔵と微妙な距離にいた。 「なんだ?」 三蔵の呼び掛けに深く息を吸い込んで 「三蔵…私の過去のこと聞いてもらえる?」 そう真剣な眼差しを三蔵に向けて言った。 「…座れ」 近くの椅子を指差され私はそこに腰かけた。
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