ブレスレットを起点として帰ると三蔵の上だった。それには驚き一瞬固まる。
三蔵は魘されており、私は直ぐ様上から退くとブレスレットから服を適当に出して着た。
…よかった、起きてなくて
そう思っていると
「…真奈美さん?」
と声をかけられた。振り替えるとコップを持った八戒。
私は思わさず後ずさった。
先程の烏哭との行為が悟られてしまうのではないかと恐怖で声が出ない。
「…あ、えと…ただ、い…ま」
絞り出した声は小さく掠れていた。
「おい…」
後ろからそう声が聞こえ、思わず肩を震わす。
すると腕を引かれ抱き締められる体勢になり硬直すると首筋に顔が近付いてきた。
「…くせぇ」
その一言にさらに身体が強ばる。
「…さ、三…蔵、あの…そ、の」
身体が震えて嫌な汗が出てきた。
振り向くと三蔵のしかめた顔とそのバックに雨…
「ひっ…ごめ、なさ…許し、おと、さ…」
耳を塞ぎ、焦点の合わない目で雨を見つめながらそう呟くと意識を失った。



「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
がばりと上体を起こす。
忘れることのできない過去の出来事が頭の中を巡り、息が詰まって呼吸が自然と荒くなる。
雨の日なんてなければいい。
そう思いながら汗をぬぐう。
見れば誰もいなく閑散とした室内で寝ていたらしい。
その静けさに思わず自分を守るように身体を抱き締める。
一人は怖く過去を思い出す。
「さんぞ、どこ…?」
私はその場から立ち上がりふらふらと二人を探しに向かった。

「!だぁッ…!!足場サイアクッ」
悟空は六道と闘っていた。
雨によってぬかるみ滑る足元に顔をしかめる。
と、視界に入った人に目を向ける。
「三蔵…」
自分は関係ないとでも言いそうな態度に思わず顔がひきつった。
数日前に誘拐された彼女なら何て言うだろ…そう考えて顔を曇らせる。
「死なねーもん そいつらは」
「死んでもお経上げてくれなさそうですしねぇ」
という八戒の言葉がやけに現実味があり苦笑いを浮かべる。



私はふらふらと歩いていた。
嫌でも目に入る窓の外の雨に震えていると少し先に人影が見えた。
私は窓を開けてそこから出ると雨に濡れながら向かっていた。
「……………………………え?」
やっと見えたその光景に思わず立ち尽くす。
何が起きた?
「三…蔵?」
わらわらと三蔵に集まる3人を見ながら私は動けずにいた。
「三蔵ぉッ!!さんぞ…」
悟空の悲痛な叫びがその状況を示しているようで
「さんぞ?」
理解ができず…いや、理解したくなく、その場を立ち尽くしていた。


「悟空…あれが『妖力制御装置』の封印から解き放たれた生来の姿」
そうポツリと八戒は呟く。
六道を殴り飛ばす速度が速くて見えない。
思わず固唾を飲んで見ていると後ろから雨音に混じって足音が聞こえる。
そちらを振り向くと真奈美がいた。
「……真奈美さん」
そこにはいつもより幼く感じる少女がいた。
すると八戒の隣に座り、真奈美は左腕に短剣を刺して三蔵の傷口に血をドバドバとこぼす。
「あとは輸血だけ…」
左腕の傷はかなりの深さで脈に合わせてドクドクと血が流れている。
真奈美は青ざめた顔をしながらその場に倒れた。
八戒が三蔵の傷は確認するとすでに塞がっていた。
真奈美の傷も徐々に塞がっていた。

▼モドル

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