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私達は酒場に来ていた。 ここらでは一軒だけらしくそれなりに込み合っていた。 と、店を見ると見たことのあるチャイナ服を着た店員さん。 ということは食べ物に気を付けなくては…そう考えているとお客に店員さん…いや、敵の八百鼡が尻を触られていた。 私は灰皿を掴むとその男目掛けて投げた。 メニューを確認した後悟空が注文のために八百鼡を呼ぶ。 「おーいッ お姉さんオーダーよろしくっ」 私は特に食べる物は頼まず八百鼡を見つめていた。 「あの?なんですか?」 八百鼡にそう言われてにっこりと 「いや、綺麗な方だと思いまして」 そう言うと少し頬を染めてそそくさと帰っていった。
さっきの女と経文を奪う。 そう考えながら店長に先程聞いた注文を述べていく。 かなりの量に店長も苦笑いを浮かべていた。 この料理に毒を混ぜれば任務は終わる。 それにしても…一見普通の人間にしか見えないが果たして蘇生実験に必要なのだろうか━
「…どう思う?」 「どうって?」 「俺達が長安を発って今日で一月になる」 その言葉にこの世界に来てもうすぐ一月経つのか、そう思った。 「そういえば…あと少しで誕生日だ」 うっかり声となって漏らした独り言。 しかし皆真剣で聞いていないようだった。 よかった…そうホッとする。 誕生日は雨の日の次に嫌いだ。 『あんたなんか生まれてこなきゃ…』 何度も親に言われてきた言葉を思い出してため息をつく。 そういえば…この一月で感情のコントロールが出来てきたな。 前まで毎日見ていた悪夢も数日に一度に減ったし… そう考えていると 「御注文の品ですぅ」 「わーい」 料理が運ばれてきた。 悟空がすぐさま手をつけようとしたので慌てて"料理の毒は無い"そう心で唱える。 ギリギリのところで間に合い咀嚼する悟空にため息をついた。 と、 「きゃあッ」 八百鼡の悲鳴が聞こえる。 またあの酔っ払いか…そう思って立ち上がるとつかつかと歩み寄り掴んでいる腕をひねりあげる。 「…あーあ オッサン下手だよ女の扱い方がさ」 そう悟浄が呟くと私の腕を振り払って悟浄に食って掛かる。 「大丈夫でしたか?…八百鼡さん?」 八百鼡だけに聞こえる小さな声で呟くと目を見開かれた。 と、後ろから物の割れる音。 「何てことするの!!」 八百鼡がそう叫ぶと悟空が大声で叫ぶ。 私は離れたところで無事だった肉まんを頬張りながらそれを観察していた。
私は目の前で喧嘩をする三蔵一行に呆然とする。 それにしてもあの少年は食べたハズなのに何故生きているのだろう? そう思っていると 「あ…肉まん美味し〜」 後ろからそう聞こえた。 見れば毒の入っていた肉まんを美味しそうに頬張っている。 何故なのだ?確かに毒を入れたのに… すると女が近付いてきて 「毒は事前に抜かせてもらいました」 そう言って一行の所に歩いていった。 あの女…何者?!
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