「で、なんですか話というのは」
僧正さんに呼ばれてかなり不機嫌な三蔵と共についてきたが、相手のにこにことした笑みにげんなりする。
「実は是非とも三蔵様にこの寺院への長期滞在を願いたく存じまして…」
「私は先を急いでいるのだが」
「一か月…いえ一週間でも構いません!!」
何が一週間でも構いませんだよ。己の過去を思い出して不機嫌になる。
『一週間でいいから!お願い!』
『やっぱりあと数日!』
そう言って結局一か月ほど時間を無駄にされたのを思い出す。
あれは人生で一番の無駄な時間だった。
「…あんた達ソレ
光明三蔵にも同じこと頼んだだろ」
そう言った三蔵を見上げるとフッと笑った顔をしていた。
「ええ…それは
丁重にお断りされましたが」
「本当に甘い人だなあのお師匠様は
失礼する」
歩き出した三蔵についていくと後ろから三蔵を呼び止める声。
それに三蔵が振り返って
「光明三蔵法師があえて言わなかったことを俺が言ってやろうか?
いいトシこいてわがままぬかしてんじゃねーよ」
そう言い放った。
そしてあの妖怪が襲撃しているのを思いだし走り出すと廊下の途中で報告をしに行く僧とすれ違った。
「あ…三蔵置いてきちゃった」
まあ、大丈夫だろう。
そう考えると思い切り地を蹴り速度を上げた。

妖怪がいる場所につくとまだ3人はおらず葉が震えており、妖怪が葉を殺そうとする間に入り体当たりをした。
「ちっ?!なんだこの虎」
私は葉を守るように立つと威嚇するように吼えると3人の声が聞こえた。
そちらを見れば悟浄が
「真奈美ちゃん早くない?それよりまだその格好なの?」
そう言われたのでもう良いだろうと元の姿となる。
「かなりのスピードで走ってきましたので。ただ、床が傷付いたかもしれませんね」
そう言うと後ろから困惑したような声が聞こえて振り返ると葉が私を見て譫言のように『虎が人に虎が人に』と呟いており、私は葉の前にしゃがんだ。
「私は元々人よ」
「え?!」
すると、妖怪が投げた石がこちらにも来て、隣の壁にぶつかった。
「ちっ…"防護壁"とりあえずあんたここにいたら?」
そう言って3人の元に歩いていった。

「先手必勝!!俺様の真の力を見せてやるぜ!!!」
そう言って妖怪の右手から刃が出てきた。
思わず腕を刀にしようとしたが止めた。
「ああ だから右そでだけなかったんですねェ」
「ダッセェ服だと思ってたンだよなッ」
その言葉が聞こえて自分の服を見る。
白生地に模様のあるシンプルなワンピースにショートブーツ。そして結ってまとめてある綺麗な髪型。
前のセカイとはかけ離れている地味な装い。
これはせめてもう少し綺麗な服の方が良いかなと思考を凝らす。
ブレスレットに変えた服の中にこれよりも動きやすくて綺麗な服ってあっただろうか?今度探してみよう。

「倒れ方が無様だ 40点減点」
と、いつの間にか三蔵がいた。
「ついでに女にも石投げたから10点減点で」
そう言うと八戒が笑顔で
「計90点の減点ですね」
そう言った。
あ、原作と点数変えてしまった。
思わず頭を抱えそうになる。
「あれ?そういえば…」
このあと確かあの妖怪…そう考えて三蔵に向かって走り出した。
「10点減点…ゲームオーバーだ」
そう三蔵が言った。
「あ、やっぱ変わってる…」
私は三蔵の近くに来ると
「…バーカ 言われなくても死んでやるよ」
「"防護壁"!!!!」
そう叫んだ。途端に爆発した妖怪。
間に合ったことにホッとする。
「大丈夫かよ三蔵!?真奈美」
そう言って駆け寄ってくる悟空に
「ああ大したことない」
「守りましたから」
そう答える。


「あなた達は…何者なんですか!?」
葉の言葉にそちらを振り返る。
「今までにも沢山の血を浴びた…って
こんな風に殺生を続けてきたのですか!?」
私は葉に歩いていくと腕を刀に変えて喉元に当てる。
「生きるのには殺生を必要とするときがあるのよ。世の中無殺生で生きれるほど甘くはないの」
そう言って腕を戻すと私は"虹龍"と呟くと七色に輝く鱗を持った大きな龍に変化して雲の広がる空へと登っていった。

▼守

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