メキョッ、異様な音に視線を向ければ蜘蛛女がメタモルフォーゼの最中だった。
その気持ち悪さに思わず顔をしかめる。
「うっわーマズそう!!」
「いいねオマエ。そーゆー思考回路で」
「…あれにもなれますけど」
「それはやめてくださいね?」
そう喋っていると蜘蛛女が糸を吐いてきた。
咄嗟に水になり回避する。
「真奈美ずりぃぞ!」
「えへッ」
ぶりッ子のような『えへッ』に自分で気持ち悪くなった。あれはないだろ…
そう考え苦笑していると
「きゃあぁぁぁぁぁぁッ!!」
朋茗が目を覚まし甲高い悲鳴が耳をつんざいた。
耳が痛くなる悲鳴に思わず顔をしかめた。


蜘蛛女が糸を吐き八戒の首を締め上げた。
苦しそうな表情と漏れる息に私は直ぐ様八戒の首を絞めている糸を切った。
と、同時に銃声が響く。
「八戒大丈夫ですか?」
そう聞くと呼吸を整えて頷かれた。
先程の銃声はお父さんが撃ったものだった。
「…おのれ。人間ふぜいが…!!」
そう言うと蜘蛛女は仲間を喰らい始めた。
朋茗の前に三蔵が立ち塞がるが、奇しくも朋茗には見えてしまった。
「いやあぁぁぁ!!
嫌い!大ッ嫌い…!!妖怪なんて…妖怪なんて!!
死んじゃえばいいんだ!!」
その言葉に悟空が傷ついた顔を一瞬し、私も動きを止める。
『あんたなんて死んじゃえばいいんだ!!この化け物!』
『何で生きてるのよ死んでよ!疫病神!』
「危ないッ!!」
「ガハッッ?!」
と、蜘蛛女の脚が悟空と私をぶっ飛ばし、
反応に遅れたために壁に衝突した。
『ナンデ死ナナイノヨッ!!』
意識が飛びそうになる中、そう叫ばれた気がした。

「いー加減にしろてめェら!この人達は関係ねェだろうが!!」
「ボウヤこそ何故そこまで低俗で無力な人間なんぞに味方する!?ボウヤ達だってもとはと言えば…我々と同じ妖怪じゃないか!!」
その言葉に朋茗はピクリと反応し、さらに3人も一瞬だが動きがあった。
「…るせーや。人間だとか妖怪だとかそーゆーちっちぇえことはどーでもいいんだよッ
ただ飯がうまかったんだ。そんだけ!!」
その言葉に私はピタリと止まった。
確かに人間と妖怪なら小さい。
しかし人間と人間なら?

フラりと立ち上がると蜘蛛女に向かって走り出す。
『呪われた子だわ…』
『ここがあなたの家だから何かあったとき以外は私たちの家に来ないで』
『こんな良い金蔓、羨ましいわ』
愛なんて知らない。優しさなんて知らない。
道具としてしか見られていなかった昨日までの日々。過去の自分は果して人間と呼べる生き物であっただろうか…?そもそも昨日までの自分は生き物だったのだろうか?

「…っ、私はあんたらみたいに妖怪なら良かったわよ!!」
私は泣きながらそう叫ぶと蜘蛛女の腕を斬り落とした。
それと同時に"魔戒天浄"の声が聞こえ悟空がトドメを指すと、蜘蛛女は消滅した。
「真奈美さん大丈夫ですか?」
泣き崩れている私に声がかけられる。
私は姿を風に変えるとその場を逃げるように後にした。

▼消えない呪縛

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