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数年前から見る同じ悪夢のせいで、寝て30分も経たずに起きてしまった。 毎日の事であるが慣れる事は無くてため息を漏らす。 嫌な汗を拭っていると"ガシャン"と三蔵の部屋の方から音がしたと共に、卑下た笑みを浮かべた男が室内へと入ってきた。 「こんばんは、お嬢さん」 「ごめんなさい、今機嫌が悪いのよ。それと、女の寝込みは襲っちゃいけないわよ?"貴方は宝石"」 男を宝石に変え、私は三蔵の部屋へと駆けて行った。
そろりと三蔵の部屋に入ると三蔵が丁度殴られている真っ最中だった。 「その辺でやめておきな」 蜘蛛女のその言葉が聞こえる。 三蔵も蜘蛛女も私に気づいていないらしく漫画のやり取りが目の前で繰り広げられる。 すると先程まで三蔵を殴っていた妖怪が二人から離れた場所に移動した。 私はその背後に廻りこむと、手を刀に変えその身体を真っ二つに斬り裂いた。 身体に飛び散る生温かい血液と鉄臭さに思わず顔を歪める。 いまだ蜘蛛女は気付いていない様だが、三蔵は気付いたらしく目線が一瞬こちらに向いた。 「美味しそうだわ ボウヤ」 「…近くで見るとシワまみれだなクソバババア」 「美味しそうってどこが…?」 そう呟きながら返り血を拭っていた。 三蔵が床に打ち付けられていたが真剣に悩んでいた。 すると 「やめとけやめとけさんなボーズ」 「硬ーし生臭ーし」 「煮ても焼いても食べられない人」 三人も部屋にやって来た。 「余計なお世話だ」 「やっぱり美味しそうじゃないよね」 「あ、真奈美いたぁっ!!」 「心配しましたよ?」 「え、ごめんなさい…?」 心配とか何に対してだろうかと疑問に思ってしまったが、今はそんなことを考える時ではないとすぐに頭を切り替える。 私は八戒が朋茗を助けたのを見計らい、一瞬風となって蜘蛛女に触れた。 「殺っておしまい下僕達!!」 その言葉と同時に蜘蛛の糸を張りめぐらせ敵の行く手を阻む。 「なっ?!」 「私、触れた人と同じ能力を取得できるんですよ。姿も同じになれますがクソバババアになりたくないので」 そう笑顔で言いながら敵を斬り倒していく。三人も次々と敵を倒していった。 鉄臭さや返り血などはもう気にしてなかった。
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