「あッてめェ!!それ俺が取っておいたスブタじゃねーかよ かえせ!!」
「るせーな、イジ汚ーぞ猿!草でも食ってな」
「言いやがったなC級エロ河童!!」
「ンだとコラ クソチビ猿!!」
騒がしい食事に思わず笑顔がこぼれる。
こんな楽しい食事は初めて…
私が求めていた『普通』の食事に思わず涙が出そうになる。
「静かに食え静かに!!!」
「すみませーん。お茶おかわり」
「あ、私もください。あとフカヒレありますか?」
「真奈美さん高いものはダメですよ。朋茗さんフカヒレは無しで」
「あれって高いんでしたっけ?」
メニューを読んでみたが寧ろ前のセカイよりも安く、八戒の言葉に不思議に思う。
「フカヒレお願いします。八戒これは私が払いますよ?」
「…一口貰っても?」
「あ、はい」
と、扉が開き朋茗さんのお父さんが入ってきた。
「お客さん達!!朋茗を助けてくれた礼だ。どんどん食ってくれ」
優しそうなお父さんなのに私は少し顔を歪めてしまった。それと朋茗と目を合わせてないことに今気が付いた。
本で読んでた人なのに、やはり人間嫌いは今だ健在らしく、そんな自分に嫌気がさす。
4人や観世音菩薩は大丈夫だったのに…やはり主要人物だったからだろうか?
しかし会って間もなかった…主要人物だったからとしても異例すぎる。
けどまだ素を出してはないから異例ってほどでも無いか。
「…あたし妖怪なんて嫌い」
朋茗のその言葉が聞こえてきた。
そしてフカヒレがすでになくなっていて八戒を見るがその目線は悟空に向いていた。
つまり…悟空が食べたのか。
「あとで猿にする…」
と、朋茗の『化け物』の言葉に記憶が甦る。
『この化け物生まれてこなければよかったのに!』
女優になる前まで言われ続けたこの言葉。
「ごちそうさま。フカヒレの代金はこちらに置いときます」
そういって一人この場から立ち去った。

「え、おつり…」
そういう前に出ていってしまった女性に私は困惑した。
すると
「…あの人実はフカヒレ食べれなかったんですよ。だから怒ってるんです」
そう囁かれた。
そういえば持っていった時何やら考え事をしていた。
その時に他の人に食べられてしまったのだろう。
「あ、じゃあおつり渡して貰ってもいいですか?」
「はい。それでは僕も部屋に戻ります。」
そういって他の人達の後を追うように部屋から出ていった。
『こんなウマイ物久々に食ったよ俺。さんきゅなッ』
先程言われた言葉を思い出し、嬉しく思いながら片付け始めた。

「真奈美さん、おつり忘れてましたよ?」
そういって八戒がカードゲームを二人としている時に渡してきた。
「あれ?おつり必要な額でした?」
多めのおつりに思わず困惑した顔で聞き返す。
「真奈美ちゃんの故郷って物価高かったんじゃねェか?」
「…高いものでなくきゃイメージが崩れるからって、言われてて…」
「…今の発言で真奈美ちゃんがスゴい役者なのはわかった」
「そうですね。普通金額は気にしますし、イメージのためにとなると…」
いつの間にかコーヒーをいれていた八戒がそれを持って来ながら考えるように呟くと
3人の視線が私に集まった。
私はそれから逃げるように三蔵の後ろにしゃがみこんだ。
「三蔵?」
普通ならここでアクションがあるのになにもない。
不思議に思っていると、それに八戒も気付いたらしくコーヒーを渡す。
「…それにしても先程の話からすると人間達は妖怪の存在にかなりの不信感を抱いてしまってますね」
「そうだな。"異変"の理由を知らん一般の人間には妖怪が本性を現した風にしか見えんだろ」
「ま、理解しろっつっても無理な話だろうがよ」
「悟浄はともかく…」
と、続く言葉が聞こえず首をかしげる。
もしかして、私がいるから?
そう考えていると
「ンだよてめェ勝ち逃げすんなよ!!」
「あと一回だけって言ったのてめェだろ!?」
騒ぐ声でそちらをみる。
どうやらまた負けたらしい悟空に苦笑いを浮かべる。
「あ、私外の空気を吸いにいってきます」
そういって部屋を後にした。
「蜘蛛女…」
部屋から出てすぐの廊下でこれからの状況を思い出す。
と、扉が開き中から皆が出てきた。
「どうしました?」
そう三蔵に尋ねると
「団体旅行客が入ったから個室で寝る」
簡潔な物言いで返され私も個室を教えてもらい部屋に入った。
先程私はあの部屋にいなかったから襲われる確率は無いだろう。
そう安易な考えをして眠りについた。

▼食事

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